ゆっくりと決断を下す。
今度こそ間違ったそれでないようにと。
何度か自分に問いて何度も同じ答えを得ると、意を決したように息を吐いてその身をゆっくりベランダに向けた。
ガラリと窓を開けてみる。
少し夕方に近い昼下がりの風がふわりと抜けて、長い髪が後ろになびいたのを押さえながら外に出る。
そして手すりに体を預けその指に摘まんだ私の指輪を見つめ沈黙守る彼に躊躇いながら声をかけた。
「・・・・あの、」
「・・・・・何?・・・今、千麻ちゃんの声聞きたくないんだけど?」
当然絡まない視線と拒絶の言葉。
想定内よ・・・千麻。
折れそうな心にそう言い聞かせると、ゆっくり息を吐いてから更に一歩彼との距離を縮めた。
「言うべきでした。・・・・あなたと揉めることになっても、彼と遭遇した昨日の事情を」
「・・・・・で?」
「・・・・でも、誤った判断でした。すみません」
ゆっくり、慎重に頭を下げる。
さらりと落ちるストレートの髪が風に遊ばれ柔らかく揺れる。
風は心地よいというのに心情は大荒れだ。
相変わらず感じる彼の威圧的な空気に呑まれて息苦しい。
「・・・・・以後気を付けて、」
「・・・・」
「会社の仕事ならさぁ。そうやって謝って許して次の実力で掻き消せるんだろうけどさ・・・・・、ねぇ?馬鹿にしてるの?」
嘲笑。
でもひどく傷ついた痛み感じるそれ。
ドキリと心臓が跳ねたのを感じながらゆっくり自分の顔を上げれば、ようやく私を見つめるグリーンアイの鋭さに心が怯む。
それでも・・・、言わなくては。
「・・・・後ろめたい事情は・・・ないです」
「・・・隠しておいてよくそんな事言えるよね?」
「言ったら・・・、きっと・・今日は私をあの2人につけなかったでしょう?」
「そうだろうね。・・・わざわざ、自分の奥さんをそんな危険孕む元カレの傍に手放しで行かせたりしないだろうね」
「・・・・・だから・・・黙ってました」
「・・・・・・まさか、・・・・・これの為とか言わないでよ?」
皮肉に悲痛な笑み浮かべる彼が、手に持っていた指輪を示すよう私に見せる。
それを一瞬見つめてから彼に視線を戻し言葉を告げた。
多分彼の望まぬ返事を。



