無言の彼を追って歩けば見慣れた車を駐車場で捉える。
当然彼の物。
キーを解除して無言を貫いたまま運転席に乗り込む姿を眺め一瞬迷う。
こうして自己判断で勝手についてきたけれど本当に私はこの車に乗っていいのかと。
それでも乗り込んだ割にエンジンもかけず不動に座る姿から私を待っているのだと理解すると助手席の扉を開け静かに乗り込む。
扉を閉めればそのタイミングを待ってエンジンがかけられ、ギアを入れ替える音が妙に大きく響くとゆっくりその場から動き出す。
でも決して荒い運転ではない。
それでも沈黙。
お互いに黙り彼は進行方向を私は窓の外を眺め、流れる景色にもどかしい感情を一緒に流す。
そのまま走り続けてくれればどれだけ良かったのか。
赤信号には止まらざるを得なく、ゆっくりその動きを止めた瞬間に彼を振り返って沈黙を破った。
「あの、・・・・黙っていてすみませんでした」
「・・・・」
「昨日、偶然にも遭遇し成行きで行動を共にすることになって。報告しようかとも思ったのですがーー」
「・・・悪いけど・・・黙って」
「・・・・・はい」
静かに断ち切られた時間。
言い訳なんて聞きたくないという意味か、それとももう私自体の声を今は聞きたくないのか。
どちらにしても今自分が出来るのは沈黙。
そう痛いほど理解するとギュッと唇を閉ざして沈黙という苦痛に耐えて帰路についた。
居心地が悪い。
朝までは・・・・心地よい空間であった筈なのに。
住み慣れたマンションの部屋に戻ると無言のままベランダに向かってしまった彼に声もかけられないまま、力なく寝室に向かって着ていたものを脱いでいつもの部屋着に身を包む。
ふわりと香った匂いはいつもの馴染んだものなのに今はただ後ろめたくて胸が締め付けられる。
それを気づかぬふりして洗面所に向かうと、元が分からない程のメイクを落として顔を洗った。
タオルで水けを拭き取って、再度鏡を見つめれば本来のあるべき自分が映るのに、その表情は不安で暗いもの。
髪ばかりは長いロングウィッグのままようやくベランダに繋がるリビングに戻ると、未だ外に身を置く彼に解けない怒りを感じてきつく目蓋を閉じて耐える。
それでも、
心は怯むけれど・・・・話合うべきなのだろう。



