「・・・・そんなに大事?」
「・・・・大事よ」
「千麻らしくもない。・・・こんなたかがアクセサリーに絆とか感じる柄じゃないでしょ?」
「・・・・そうね。たかがアクセサリーよ。そんなものに夫婦の絆なんて物感じてない」
「やっぱり・・・・、千麻と俺は似ているよ」
「きっと・・・・一緒にいたら反発もなくストレスもなく自分のペースでも動ける2人よね?」
それは認める。
私と恭司は同類で気が合って相性はいいのだろうと。
じゃなきゃ、別れても求めたりしない。
「・・・・俺にしとけば?」
スッと私から遠ざけられた指輪と、代わりに覗き込んで距離を縮めた彼の顔。
それに怯むでもなくまっすぐに見つめ返すと声を響かせる。
「・・・執着見せるあなたなんて・・・・興ざめ」
「・・・・手厳しいな千麻は」
「もういいでしょ?・・・・・返して恭司」
これ以上粘っても意思は変えないと示して同じ言葉の要求を告げる。
しばらく崩れぬ微笑みで私を試すように見つめていた彼が一瞬ゆっくりとその目を閉じると小さく息を吐いた。
「・・・・返さなくもない」
「この期に及んでまだいじめっ子がしたいの?」
「好きな子ほど苛めたいものでしょ?男って生き物は」
「知らないわ。・・・・・で?今度は何?」
さっさと子供のいじめを終わらせろと彼の言葉に乗って見せれば、ニッと満足げに弧を描いた唇がいじめっ子にふさわしい言葉を吐き出す。
「・・・・抱かせて」
「・・・・・却下」
「って、言うだろうと思ったからそれは言わない」
「じゃあ、何?」
「なに・・・それに比べたら些細で可愛らしい事だよ」
「・・・・・・・」
「・・・この口紅・・・ついてもすぐに取れるかな?」
「・・・・・・・・キスしろって事ね?」
「やっぱり・・・千麻が一番俺を理解しているとーーー」
ニッとおかしそうに笑う姿にもう憤るのも無駄。
言葉を聞き終わるより早くネクタイを掴んで引き寄せると顔を近づけた。
唇が触れる瞬間に耳に入り込んだ扉の開閉音と人の気配に視線だけ走り、『あっ』と思えどその感情を後回しに恭司の要求を優先した。
重ねて啄んで、キスと言える重なりをしっかり与えるとゆっくり離す。
離れて捉えるのは至極愉快で満足だという微笑みと、横にちらりと流れる視線。
その先は私だって気が付いている。



