夫婦ですが何か?





Side 千麻



嫌な予感。


胸がざわめいて時々痛い。


不穏な空気感じて、ビクリとして目蓋を咄嗟に開けば目が眩んで再度閉じる羽目になった。


そして今度は注意してそろそろと開けて状況を確認すれば、映るのは飾り気のない低い天井と蛍光灯。


壁は白くて・・・何だろう、寝心地悪い。


不意にそう思って体を起こせば自分が横たわっていたのは何やら小さな控室のような小部屋のソファーで、何がどうなったのかと記憶の回想を始めた頭に響く声。


と、匂い。



「や、お目覚めかな?アリス」


「う・・・・わぁ、目覚め最悪」


「ウサギの穴じゃなくステージから落ちるなんて・・・、ワンダーランドは見えたかい?千麻」


「・・・・今はマッドな男が見える」


「お茶でも入れようか?」


「もういい・・・」



くだらない言葉遊びはたくさんだと頭を抱えながら手首を振ると、何がおかしかったのかくすくすと笑った男がペットボトルのお茶を投げた。


それを受け取りごくりと煽る。


そうして、自分の起きた事態をゆるゆると頭に回想し、ここに至った経緯を理解。




「・・・・どの位意識失ってた?」


「そうだな・・・1時間弱?」


「・・・・彼女達は?」


「大丈夫。今は予約やら受付中で大盛況だよ」


「そう・・・・じゃあ、お役御免かしら?」



どうやら迷惑は掛からなかったらしい事態に安堵し目蓋を降す。


後はもう彼女らの問題だと自分の責務の完了を意識すると目蓋を開けた。


そしてゆっくり私を見つめ微笑む男に挑むように視線を向けた。




「・・・・返して」




はっきりときつく響かせた言葉。


お願いではなく命令だ。


その響きに微笑み崩さぬ姿が珍しく言葉遊びより早くポケットに手を滑り込ませると、その指先に私が望む輝きを摘まんで目の前に示した。




「・・・・これの事かな?」


「そう・・・・それよ。返して」




今度は手を差し出しての要求。


ゆっくりソファーから立ち上がるとカツンカツンと靴音響かせ彼に寄った。


絶えず含みある微笑みは本当にチシャ猫の様だとも思ってしまう。


その距離を縮めるほどに強くなる香りも危険を感じさせて、それでも・・・・どうしても彼の手にあるそれが欲しくて手を伸ばしてしまうんだ。