Side 茜
耳に響くコール音に聞き飽きたと眉根を寄せる。
そして粘ってカースピーカーから耳に流し込んでいたコール音を断ち切って溜め息。
おかしい。
今は出れない状況なのか。
家で一通りの仕事を片付けてからいざ妹らと奥様の勇姿を確認しようかとマンションを後にした。
車で走り出してからしばらくして朝の彼女との会話を思い出して携帯を取り出し発信すること数回。
一向に出る気配のないそれに徐々に疑問感じ表情も歪む。
彼女らしくない。
出れないのであればワンコール鳴らす。
それが俺との間に暗黙のルールとしてあって、すぐにかけ直せる時以外はだいたいそれで反応があった。
なのに、今は応答もかけ直しもなければワン切りもない。
止まっている赤信号を見ながらハンドルを苛立つ感情に合わせてトントンと叩いて、他の事態を思考してみたけれど・・・。
やっぱりおかしい。
そう決断つくと携帯を手にして朱の名前を拾い上げコール音を響かせる。
無機質な音を数回。
これもまた繋がらないのかと眉を顰めたタイミングにざわめく雑音と一緒に聞きなれた妹の声が響いた。
『もしもーし?お兄ちゃん?』
「うるせ~・・・、会場か?」
『うんうん、今ねぇ予約受けてる最中』
人の声や会場のBGMやイベントの音に顔をしかめつつ、いつもより声を張った妹の能天気な声の響きに多少の安堵。
問題のなさそうなその場に思い過ごしかと力を抜くと、気になっていた彼女の現状を問いかける。
「今そっち向かってるんだけど、いっくら電話しても千麻ちゃんに繋がらないんだよね?そこにいる?」
『・・・・あっ!!・・・・お兄ちゃんに連絡するの忘れてた!!』
「あっ?何を?」
一瞬の間の後に焦ったような声を響かせた朱が、その不備を叱責されるのを怯んでか恐る恐る声を漏らす。
それに再度寄ってしまう眉根と浮上する不安。
『ちょっ~と・・・過激なファンが千麻ちゃんに迫っちゃって・・・・、』
「はっ?」
『ちょっとイっちゃってる男振り切ったはずみに・・・バランス崩してステージから落ちちゃって・・・さ、』
「・・っ・・・はっ!?おいっ、大丈夫なのかよ!?」
『だ、大丈夫大丈夫!軽い脳震盪?今は別室で休憩中・・・』
「軽くても脳震盪だろ!!意識失ってんじゃん!!一番に俺に連絡しろよ馬鹿か!?」
車内に響く自分の焦った怒りの声。



