『なんであの女が?』
まぁ、そんなところだろう。
彼女たちがひそひそと私を示し言う言葉は。
いちいち傷つく事も無い、言われ慣れ感じ慣れたそれらを無視し重役専用のエレベーターホールにつくとボタンを押す。
丁度1階に留まっていたそれが扉を開き、中に乗り込むと押し慣れた数字を点灯させ扉を閉めた。
瞬間。
「・・・・重いです副社長」
「お互いに視線が痛いねぇ」
背後から私に絡みついてきた腕。
そしてそのまま肩に頭を預け私の頬を指で突く彼に深く溜め息を吐く。
『痛い』と言った割にどこか可笑しそうに口の端を上げているのが嫌味に感じ、頬をついていた手をそっと払うと誰のせいか問うてみる。
「元々の悪印象。それを悪化させたのは副社長の突飛な思いつきのせいでは?」
「ははっ、ごめんね~、俺モテルからぁ。・・・・妬いた?」
「・・・・・・身の危険は感じますけど」
「・・・何それ」
「副社長、女とは実に執念深く残酷である行為をいともあっさり他人にしてしまえる生き物なんですよ?」
特にそれに怯えるでもなく淡々と諭す様に告げれば、納得したように頷く彼の姿。
そう彼は確かに女性関係は豊富である。
でも絶対にそう言った低劣な女を選び関係を持ったりしない。
彼もまた私に諭されるでもなく女の醜悪な部分を理解しているのだと分かる。
だからこそ・・・・、
この契約に自分が選ばれたのだ。
愛はなくとも信頼はある。
後腐れも無く、
問題も起きない。
たまたま失ったパズルのピースを埋める予備の無地のピース。
隣り合っても違和感ある存在。
それが私。
代わりは本物にはなれない。
なりたいとも思わない。
だから1年なのだ。
1年したら私は私に戻り、彼は隣合う新しい色の付いた誰かを探せばいいのだ。
考え耽っていれば静かに動いていたエレベーターは示した数字に近づいていく。
チラリとそれを確認し、そろそろ離れろと巻きついていた腕に手を絡め口を開きかけたタイミング。
「ごめんね」
響いた謝罪に思わず黙り、振り返った顔のすぐ至近距離で申し訳なさそうなグリーンアイを捉えた。
突然の謝罪に思考が追い付かず不動になり、自分のそれが追いつくより早く続けられた彼の声。



