昨日からどれくらいの人間の視線を感じ、フラッシュを浴びたのか。
今もあまりの人数の前に立ち、その顔などいちいち把握できない程。
つまりは大盛況と言えるのか。
『朱ちゃーん、藍ちゃーん可愛い~』
『ドレス着てる子もこっち見て~』
後者の対象は私。
だから言われるままに愛想は振りまかずとも振り返れば黄色い歓声とフラッシュやシャッター音の嵐。
世も末。
ドレスになのか年齢偽証している厚塗りな私に対してなのか。
同性の歓声を集めても素直に喜べない現状として、私はやはり主役をやるようなキャラではないと自覚した。
きっと彼女らや彼であるならこの場に順応し観客を喜ばせるように魅力を発揮するのであろう。
私はやはり黒子が落ち着く。
自分の居場所として落ち着かない現状に心で溜め息をつきつつ、仕事なのだと言い聞かせ取り囲む人波にその姿を晒した。
そして同時にその目が探す。
本来なら追いたくもないあの嫌味で狡猾な姿を。
こんなに多勢であってもあの長身で異色なオーラのあいつはいればすぐに見つけられるはずなのに。
つまり姿を捉えられない今はこの場にいないという事。
その事実に大きく落胆。
今日こそは何があっても取り返そうと意気込んでいた出鼻を挫かれたような。
これは良策ではないけれど・・・・連絡してみようか。
周りにはその姿をアピールしつつ、頭で私的な悩みに思考していればそれから引き戻すような声の響きで我に返った。
『お人形さん!!』
他の声さえ圧倒しそうな声と共にずいっと前に身を出してきた姿が、どうやら私のみを見つめて恍惚とした瞳を揺らす。
いや、瞳孔が開いている?
その姿は決して他の集まってきているような少女達とは異色で、まず性別から大きく異なる。
そう、男。
見る感じ・・・ヒョロッと細くてそれでも身長は程々にある。
なのに猫背なのか背中を丸めているから実際よりは低く見える。
服装自体は決して不潔ではないけれど洒落っ気もなさそうなシャツ姿で。
まぁ、一言で括っていいのか躊躇われるけれど・・・、世に言う・・・オタク?
そう言うと語弊がありそうだ。
だけど他にいい言い方もわからずそれに括った。
そんな彼がほかの少女らをかき分け私の前に踏み出して迫り嬉々とした表情を浮かべて見つめる。



