『千麻ちゃーん、もう行かないと~』
ふざけたやり取りで時間の概念を忘れかけていれば綺麗にハモった双子の急かす声。
うっかりしていたと体を捻ったのに、すぐさま腕に絡み付いた彼の指先が真逆の方へ引き戻し。
非難するように振り返ればあっさりと唇を奪われる。
でもソフトに軽く。
触れてすぐに表情読める距離に離れれば、僅かに妖艶さを見せる彼がニッと笑って手を離した。
その弧を描く唇には確かに触れ合ったという証拠の黒い口紅が付着する。
「いってらっしゃいのキス」
「また、言い訳付のキスですか?」
「だって、言い訳なきゃさせてくれなさそうだし」
違う?
そんな風に私のいつもの意地悪を逆手に悪戯に笑って見上げてくる姿に軽く押し黙る。
でもそう簡単に負かせると思わないで。
私が黙ったことに更に優越で弧を強めた瞬間。
それを相殺するようにニッと口元をゆがませると、彼の胸をグイッと勢いのまま片手で押し倒し、食いつくように唇を重ねた。
しっかり密着させ下唇を軽く食むとチュッと響かせゆっくり離れる。
してやられた。というように苦笑い浮かべる彼の唇を指先でなぞりながら言葉でとどめ。
「男なら・・・言い訳なくこんな風にキスした方が潔い」
「勉強し直しまっす」
『千麻ちゃーん!!』
双子の再三の呼び出しに今度こそはと立ち上がり入口に向かう。
「俺も時間見て後で覗きに行くね」
「・・・・・連絡入れて貰えますか?」
「ん?何で?」
「一応です」
「ふぅん、了解」
はっきりとしない理由でもさして懸念すべき問題ではないと了承を響かせた彼が軽く手を上げ私を見送る。
疑いのないその姿に若干の後ろめたさを感じ胸が嫌な感じにざわめいた。
これも嘘になるのだろうか?
彼に恭司の介入を告げずに今日もまた接触しようとしている。
そのための【一応】。
彼に知られることなく、揉めることなく全てを終えたいのだ。
今までの冷静な私ならきっとこう言った?
偽った時間がそうそう思い通りに事が運ぶことないと。



