ゆらりとドア枠から離れる体。
まだ気まずさをその姿に示しながらもゆっくり一歩を踏み出すと私の傍に距離を縮める。
その彼の手にはパーカーが握られていて、私の前にゆっくり座ると困った笑み継続のままおもむろにそれを被せてするりと下し私の肌を覆い隠した。
大きめのフードが落ちることなく私の頭にかかり目元も隠した。
一瞬視界を奪われそれを取り除こうと指先絡めた瞬間。
そっと柔らかく重なった唇に不動になり、唇が離れるより一瞬早く彼の手によってフードを優しく下げられた。
「・・・・仲直りのキス」
「・・・・別に喧嘩はしてませんが」
「じゃあ、・・・態度悪くてごめんなさいのキス」
「何かと言い訳つけてますがキスしたいだけでは?」
「うん、・・・・だって、千麻ちゃんとキスするの気持ちいい」
どんな理由?
そんな突っ込みを入れるべきだったのか。
でも、言葉を示すようにニッと笑った彼の唇が再度それを求め近づいたのに口を閉ざして受け入れた。
確かに・・・困るほどに気持ちいい。
それは、悔しいけれど認めるわ。
今度はソフトで遊ぶようなキスを浅く繰り返して離れ彼が笑う。
無邪気に笑って、私をまるでぬいぐるみのように抱きしめるとそのままベッドに沈んだ。
ドサリとベッドのスプリングに揺れ、彼の匂いに一瞬眩む。
あっ、困る。
物凄く・・・心地良い。
徐々に自分自身にも染みつく彼の匂いがいつの間にか精神安定剤にも近くなっているのを感じ。
それを後押しするように柔らかく髪を撫でる彼の指先。
ああ、猫のような気分。
「・・・今日は、・・・あいつらのお世話ありがとうね」
「・・・いえ、」
「どうせまた、詰め甘い事態だったんじゃない?」
「・・・まぁ、私もいい勉強になりました」
「フッ、つまり結構焦った千麻ちゃんが見れたんだね。それは見たかった」
「悪趣味な」
思い出したように苦笑いの彼が今日の仕事の労いを告げて、嫌味に切り返せば更なる嫌味で返された。
その間も継続する抱擁と愛でるような触れ方にさすがに落ち着かずに視線が泳ぐ。
甘ったるい。
私のキャラでもない。
今までだってこんな風に付き合った人と過ごしたことはなくて、変な風に感じるのに不快感はない。



