そう彼自身に問題はないのだ。
こうして過ごしてみれば色々衝突あれどその生活は程々穏やかで不快感もない。
気を遣うでもなく本音で語り趣向もわりかし似ていると思う。
正確に難はあっても馬鹿じゃない。
むしろ尊敬するほど狡猾で頭の回転は速く、その5歳という年齢差だって精神面では感じさせない。
決して付き合えない対象の相手ではない。
結果、何が阻むのかと言えば長く築きすぎた仕事の関係?
仮に一線超えて男女的にも関係深めてしまったら、今まで保っていてベストであった仕事の上での関係が大きく揺れそうで不安なのだ。
感情の無い快楽だけの行為ならいいけれど、彼にとって朗報か悲報か。
そう、彼とのキスや抱擁に小さくも反応し受け入れてしまう程に私の中で信頼以上の感情が芽生えてしまっている。
でも僅か。
今なら踏みとどまれると不意に思ってのこの発言。
ここまで信頼強めた副社長と秘書の関係を維持するのか、バランス崩してもそれ以外の関係も強めるのか。
その迷いを彼にも打ち明けてみた現状。
グリーンアイをこれ以上ないってくらい揺らし驚く姿が一瞬不動になり、その間に思考したのかこれまた予想外の言葉を返した。
「副社長やめろってこと?」
「・・・飛躍しすぎ。と、いうか、重点そっちですか?」
「そっちって・・・他にどこに重点置けばいいの?」
「極論言えば私との【仕事】か【夫婦】かの選択の問題です」
「2択?」
「簡単に上げれば、まぁ・・・」
「【両方】はないわけ?」
「・・・今現在はその選択肢のみでお答えーー」
「【夫婦】」
「・・・・・・」
「2択だったら迷わず言える。・・・・・って、言いたいけど・・・・ごめん、それも言い切れない」
そう告げると、眉根を寄せつつ眉尻下げ、その手で髪の毛を掻き上げるように俯き息を吐く。
その口元に小さく弧を描いているけれどそれは困ったの意思表示。
ああ、彼まで迷わせてしまった。
あの一瞬、【夫婦】と言われ僅かにドキリと淡く存在する感情が歓喜したのも本当。
なのに、「言い切れない」と言われた判断に歓喜した自分は更に強く正直だ。
やはりまだどこか恋愛感情より深くて強い関係を再確認。
秘書としての関係を否定されたら辛いのだ。



