「千麻・・・ちゃん?」
「はい、先ほど玄関でリクエストいただいた千麻ちゃんですが」
それが何か?
そんな感じに動揺するでもなく、書類に視線を戻し始めると口を開く。
「この項目ですが、この事例はーーー」
「はっ!?・・・・えっ?な・・・ちょちょちょ・・・」
私の声を遮って不可解な音の塊を吐き出した彼に再度視線を戻していく。
真面目に聞けとばかりに眉根を寄せるのに、彼とくればそれどころではないと動揺露わの困惑顔。
相変わらず私を指さしたまま口をパクパクとしている姿に溜め息をつくとじっと見つめる。
何でしょうか?
そんな感じで。
「・・・・・何で・・・入って・・・」
「ご所望したのはあなただったかと?・・・・と、いうか、私も入ってなくて待ってたんです」
「ご、ごめん・・・・、」
不満げに言葉を返せば困惑しつつも謝罪を口にする彼。
だけどもまだ彼の懸念の続行。
懸念というよりは複雑な男の生理的問題?
「・・・・あのさ・・・馬鹿な質問だけど・・・・裸?」
「・・・・・恐ろしく馬鹿で理解不能な質問ですね。自宅の風呂で水着着用するような習慣は私にはありません」
「で・・・すよね。・・・・・・・あ~・・・驚きすぎて眠気とんだ」
「今更そんな反応されるとは・・・、こっちが驚きです」
「驚くよ!!驚くでしょ!?目が覚めたら・・・何この男子的においしい状況。一瞬あの世に飛んだかと思ったし!!」
「・・・・・ご希望なら今すぐあの世に飛ばせて差し上げましょうか?」
言いながら『沈めるぞ』的にその手を掲げて睨みつければ、苦笑いの彼が『遠慮します』と小さく言ったのに笑ってしまった。
そしてようやくそれなりに落ち着きを見せた彼を確認し、書類で気になっていた部分を指摘していく。
「この事例は過去にも似た記録があります。結果的に大きな収益にはならなかったので今回は別の方向性でいかれた方が賢明かと。あとは・・・この案は端から却下。どうパターンを組んでも大した利益はあがらなーーー、・・・・・・・・何ですか?」
「ん?・・・・千麻ちゃん不足なんです」
書類片手に淡々と秘書の姿で助言をすれば、不意に書類を持っていた腕に彼の指先が絡んで私の視線を自分に向けた。
そして少し困ったような微笑み。



