怪訝な表情でまずは脱衣所との扉をゆっくり開けると、その空間には彼の姿はない。
つまりまだ入っているのだと浴室の扉に手をかけ恥じるでもなくガラリと開ける。
まぁ、今更でしょ。
そうして捉えた姿に寄っていた眉間がすっと離れた。
やはり入浴中。
ただ予想外だったのはその目蓋がしっかり閉じられている事。
一瞬倒れたのかと焦ったけれど、近づき覗き込めば小さく理解する寝息。
そしてバスタブの外に出ている手に握られている書類。
ああ、お疲れなんですね本当に。
どうしたものかとその姿を眺め思案する。
お湯は暖かいから湯冷めはしないだろうけど。
それにどうやっても私は彼を引き上げられない。
一応ゆすって声をかけても深く眠っているらしい彼の無反応。
はぁ。と小さく溜め息をつくと書類をぼんやり見つめてしまう。
だけどももう今日の思考は許容範囲を超えていると、すべてが面倒になると立ち上がり脱衣所に戻ると着ていたパーカーを脱ぎ捨て下着も洗濯機に放り込んで浴室に戻った。
別に今更だ。
裸を見られて触られてもいる今、たいして恥じる間柄でもない。と、大胆に体や髪を洗ってシャワー音を響かせる。
それでも起きない彼はどこまで疲れているのか。
全ての肯定を終えると彼が寄りかかっているのとは反対のへりに寄りかかり白濁のお湯に身を沈めた。
生ぬるい。
追い炊きをしようか。
でも、彼がのぼせるかもしれない。
そう結論を得て長湯を決意し彼の手にある書類を抜き取る。
そして小難しい文字の羅列を静かに追って彼の為になりそうな助言の要素をいくつか探す。
静かな空間。
時々ぴちょんと響く水音。
じわりじわり体の奥から温められて、それでも書類に集中しきっていたタイミング。
静かだった水面が波紋を広げ、気が付き書類を横にずらせば今まさに目を覚まそうとする彼を捉えて見つめてしまった。
多分軽く滑ったことで起きたのか、はっとしてその目を覆ったらしい片手が開ききらない目をこすり。
でも多少の記憶はあったのか、手にあったはずの書類を探して微睡んだ視線を走らせようやく私と視線が絡んだ。
「・・・・おはようございます」
まっすぐに淡々と一言を向ければ。
その一瞬は思考が追い付かなかったのかぼんやりと私を見つめるグリーンアイ。
でもだんだん場所と状況を把握してきたらしい表情の変化に笑えてしまう。
そして戸惑う感じに私を指さしもの言いたげに口が開いた。



