多分・・・・代打の秘書が予想以上に使えなかった。
一体誰が不憫にも彼の担当にあたったのだろうと疑問に感じたほど。
そう、決して彼女らが劣っているわけでないと思う。
天下の大企業の秘書。
彼に充てられたのだって当然経験深い誰かのはずだ。
ただ彼の求める理想が高すぎるのだ。
あんなの・・・普通の人にいきなりこなせという方が無茶ブリなんだ。
とは、苛立ってるこの人に言わない方がいいと決断を下す。
そしてもう一つ。
本当は変に揉めたくないから恭司の事を話してしまおうと思っていたけれどこれも鍵をかける。
今言ったら絶対に揉める。
自分で言い聞かせると、なだめるように彼の背中をさすって仕事にかかわらない言葉を口にしていく。
「お食事にしますか?お風呂にしますか?」
「・・・・・・・千麻ちゃん」
「・・・・・冗談いう元気があるうちにお風呂に沈めて差し上げましょうか?」
「冷たいなぁ。いいじゃない、今日一日千麻ちゃん断ちしたのにぃ」
酷い。
そんなボヤキを口にしながら離れた彼がネクタイを緩めながらそのままバスルームに直行する。
その片手に何やら紙の束を手に向かったところから、お湯につかりながら確認するのだろうと予測する。
ああ、よほど使えなかったようですね。
彼がこうして家でまで仕事を持ち出すところを見ると。
そのままバスルームの扉が閉まると、あがってすぐに食べれるようにと作ってあった食事を準備するためキッチンに向かった。
遅い。
バスルームに籠って1時間近く。
すぐに出てくると思っていたのに開く気配のない扉にもう何度視線を走らせたか。
仕事に集中してる?
そう思って邪魔しないようにと声はかけていなかったけれど、実は私もまだお風呂に入っていないのだ。
私だって早くさっぱりして就寝したいというのに。
お酒も飲みたいし。
そんな不満でモヤモヤしていたけれど、限界とばかりに立ち上がりバスルームの扉の前に行くと礼儀としてノックを響かせる。
「いつまで入ってるんですか?」
不満げに声を響かせ反応を待つと、シャワーのような水音は一切しない。
お湯に浸かっているだけなら私の声も聞こえていいはずなのに。



