夫婦ですが何か?



近くで作業していた係りの人を見つけると、善は急げと歩き出した瞬間。


スッと小脇に抱えていたタブレットを抜かれる。


誰に?


当然腹黒男に。


今度は何の悪戯だと睨みながら振り返ったのに、捉えたのは真面目な表情で目の前のスクリーンを見上げる恭司の姿。


そしてゆっくりと私に戻され確認するような視線で見つめられる。


何?


そんな眼差しで反応を返せば、いつものような微笑みなくすぐにタブレットで何か操作し始め一瞬の集中。


何をしているのかと覗き込もうと身を乗り出せば、ちょうど作業は終わってしまったらしい。


再度の認証音。


何かいじった?


強まる疑問の私にようやく微笑んだ彼が今操作していた物を手渡してきて腕時計を確認する。



「ちょっとお前の作ったPVいじった。そっちのが印象的だと思うよ」


「・・・・そ、」


「俺、さすがにもう戻らないと。ただの状況確認でここにきてたから時間オーバーだ」



そう言って腕時計を指先でトントンと叩く仕草に双子が嘆く。



「ええ~、」


「見ていってくださらないんですかぁ?」


「・・・まぁ、子供の遊びに興味ないから俺。頭の緩い君たちの服がお仲間にだけは認められること、協力した千麻の為にも祈っておいてあげるよ」



その言葉に彼女らの少し驚いた視線が私に集中。


瞬時に否定するように焦るでもなく手を振ると、これを期待して爆弾を投げたらしい恭司がくすくすと笑った。


やっぱり嫌な男だ。


非難するように睨みつければ、くすくす笑いを終えた彼が何かを思い出すように視線を上に走らせ、そして戻す。



「愉快な双子に振り回される黒いアリスね。・・・・じゃあ、さしずめ俺はチシャ猫って事で」


「フンッ、あなたにはお似合いだわ」


「君の敬愛する彼は・・・・何だろうね?」



ニッと微笑みこの場の人間を不思議の国のアリスに文字らえると狡猾なチシャ猫が姿を消した。


香りだけ残して。


ああ、きっと・・・・まだあの存在に振り回される。


そんな予感感じるこの匂い。






鼻に残る匂い。