夫婦ですが何か?





そう、この5年一度だって彼を男性として意識してみた事はない。


だからなのか行動言動に他の女子社員の様に反応して騒いだりときめいたりしない。


彼の気持ちのない社交辞令に華やぐ女子社員や、それをした彼を見て『ああ、よくやるなぁ』と呆れ眼で過ごしてきたのだ。


そうやって積み重ねてきた期間は確実に今に反映されていて、多分私にもそれなりに口説き文句を使っているのかもしれないけれど困った事に心は反応しない。


うん、ないない。


じゃなきゃ、昨夜裸晒したりしないしな。


自分でそんな事に納得しながら確信を得ていたのに、隣に座っている彼はそうではないらしい。


私の提案に最初こそ呆けていたけれど、すぐにニッと口の端を上げるとすでに余所見をしていた私の顔を顎に指を絡めて引き戻した。


絡むグリーンは悪戯で好奇心満ちた子供の物。


つまりはこのゲームに乗る気なのだと察して『やれやれ』と心で呟く。



「いいの?そんな危険な約束しちゃって」


「まぁ、負けると思ってませんので」


「どうかな?意外とあっさり俺にときめいちゃうかもよ?」


「・・・・」


「うわっ、露骨にドン引きした様な表情!?」


「すみません。副社長の軟派っぽい言葉に拒絶反応が・・・」


「千麻ちゃん・・・どんだけ俺が嫌いですか?」



ウザい。思わず顔に出してしまえばあまりに露骨だったらしくさすがの彼も眉尻を下げた。


そしていじけた様にシートにドサリと身を預けると目蓋を閉じる。


そんな様子を一通り確認し、何事も無かったかのように手帳を開き色々な予定を眺め始めた。


当然、私のその反応に不満を抱いている頃だろう。


だけどまずは仕事。


自分の目に見慣れた自分の筆記を見つめそして、、




「嫌いじゃないですよ」




ポツリと、補足の一言。


まぁ、嘘ではない。


嫌いか?と問われれば嫌いではないのだ。


嫌いであれば彼を全力で補佐するこの過酷で精神崩壊しそうな仕事など辞めている。


だから当たり前の事だと特に感情こめたわけでもなく、手元の手帳を眺めながら簡素に答えたのだ。


なのに、どうやら先手を打ったような事になったらしい私の言動。



「うわ・・・」



驚いた。


そんな響きの声音に反応して、ようやく視線を彼に移せば捉えた姿も驚きを見せる。


それと、興奮。