しばらく彼が満足するまで【充電】を許し、程なくしてゆっくりとその身を解放してきた。
そのタイミングを待って自分の声を響かせる。
「コーヒーが淹れたてよ。・・・ダーリン」
「完璧だね、ハニー」
彼の背後のコーヒーメーカー。
勿論それに対して体を捻り、【たまたま】そこにいた彼と対峙して視線が絡む。
直後。
必然?
ああ、一応顔は洗ってきていたのね。
触れあった頬は冷たくて、次いで重なった唇にミント系の香りと味が口内と鼻をくすぐる。
おかしい。
いつの間にか当たり前になっているキスの行為。
そして私が拒まないとどこかで思い回数を増やす彼。
かといって・・・。
拒む気もないのですけどね。
与えられるキスをすっと受け入れ、でも自分からは特に絡まず受け身で交わし。
朝という時間を配慮してなのかソフトに触れ合った唇がゆっくりと離された。
そして絡む穏やかなグリーンアイ。
「・・・・問題児な妹達のお世話よろしくね?有能な千麻ちゃん」
「仕事とあらば聞きましょうとも」
任せておけ。
そんな切り返しをすれば安心したように微笑んでから後ろのコーヒーを手に取り私に渡した。
人生とは思ってもみない体験を多々するものだと今更の理解。
全く予想もしていなかった。
自分がこんな出で立ちで往来を闊歩するとは。
私の両サイドには今日も見事な黒と白に身を包んだ彼女らがレースの日傘を手ににこやかに歩く。
そして中央を歩く私。
いつもとは違うヒールの感覚と靴音に若干の違和感。
通り過ぎざまの人たちがチラチラとこちらを見るのにもだいぶ慣れてきた。
そしてまた1人私たちの横をすり抜けていく人がすれ違いざま。
「黒っ・・・」
ぼそりと呟かれたそれは悪態なのか感想なのか。
でも的確。
言われた言葉を確認するように自分に視線を落とせば、もう2度目になる真っ黒でフリル満載のドレスに身を包んでいる。
出かける前に確認した顔は元がわからなくなりそうな程のアイメークと黒い口紅で彩られていた。
そして腰まで来る長い長いストレートロングの黒髪ウィッグ。
あまりの変貌に多分見知った顔に遭遇しても相手は絶対に私だと分からないであろう。
瞬時にそう結論出れば、下手な羞恥心も働かずにこうして人行きかう道であっても普通に歩けるのだ。
それにしても・・・。
「お二人はいつもこうしてお出かけに?」
慣れた感じににこにこと微笑みながら歩く2人にわかってはいる質問を投げれば思った通りの返事が戻る。



