だからこそ決定権は彼に任そうとその返事を待っていれば、しばらく俯いたまま無言の姿。
彼女らと言えば祈るように手を組んで懇願の眼差しを彼に送っている。
しばらくの沈黙。
そうしてようやくその沈黙を破った彼の声。
「・・・・・・有能な秘書の千麻ちゃんは有給腐るほどですよね?」
「・・・・・・・・・・・甘いんですね」
零された言葉の意味をすぐに理解すると半分呆れて息を吐き、彼女らを振り返りながら軽く非難。
そうして視線を彼に戻していけばやっと上がった顔の苦笑い。
「じゃあ、・・・それがお仕事って事で」
「年増の妻にこんなビラビラの服着せて痴態を晒せとおっしゃるんですね?」
「千麻ちゃんの隠れた美を自慢したいだけですよ」
いつもよりは申し訳なさそうに、眉尻下げてニッと笑った姿。
それにわざと目を細めてみたけれどゆっくり目を閉じると受け入れたと意思表示。
うんうんと頷くと、ゆっくり彼女らを振り返って交互に見つめる。
いまいち状況を理解しきれなかったらしい2人に一言。
「死ぬ気で売り込めとのお兄様からの命令です」
ニッと口の端を上げて了承を告げれば、時間帯も考えずに絶叫して歓喜した2人に彼の怒号が鳴り響いた。
「・・・・・・本当に大丈夫ですか?」
「ん~?まぁ、1日だし大丈夫でしょ」
メイクも服も取り去って、再度の入浴終えて寝室に戻れば、すでにベッドに入って体ばかりは起こして雑誌を眺めていた彼。
その隣にいつものようにのそりと入り込みながら、僅かに抱いていた懸念を彼の横顔にぶつけてみる。
「誰を代打に?」
「まぁ、それなり使える秘書は程々にいるでしょ。天下の大道寺様だし?」
そうは言っても期待半分。
そんな表情で雑誌を閉じるとサイドテーブルに雑に置いてその身をすべて布団にうずめた。
そして沈黙。
常夜灯程度のほの暗い部屋のベッドに身を預けぬくもりに包まれていれば当然浮上する眠気。
徐々に意思関係なく降り始める目蓋に気が付きながら隣で天井を仰ぐように目蓋を閉じている彼を見つめる。
眠ったのか。
確認できないグリーンアイにそう判断をつけると自分の目蓋も降ろしはじめ、もうまつ毛の感触を皮膚に感じる寸で。
不意に指先に絡んできた感触にパッと目蓋を開けてみる。
ほぼ同時。
「手つなぐくらいは健全でしょ」
その言葉を聞き入れ光を通した目でようやくそのグリーンアイと対峙。
僅かに困ったように微笑む彼と絡み合っているお互いの手。
それに視線を走らせてから、
「今更健全が必要ですか?」
「教育上、あまり刺激的なのはあの2人に良くない」
そう言って見えるわけでない彼女らを示すように視線を横に流した姿に納得。
ああ、確かに。
そんな納得をすると絡み付いてきていた手をきゅっと握り返して彼を見つめる。
眠気孕むグリーンアイは部屋の暗さで少しトーンがいつもより深い。
でも嫌いじゃない。
「・・・・・おやすみなさい」
そう口にすると本当にわずかに口の端を上げて目蓋を閉じた。
「おやすみ・・・・千麻ちゃん」
ああ、その声・・・酷く落ち着いて眠気を強める。
意識の終幕。



