そして写真から私に移った視線が何かを確認するように再度写真に戻り、また私本人に戻り笑う。
どういう意味かと探るように見つめていれば、答えるように伸びてきた手が私の髪に触れて遊び、補足的に言葉が向けられた。
「髪・・・・長いの可愛かったのに」
「そうですか」
「伸ばさないの?俺千麻ちゃんと知り合ってからずっとこの長さだよ」
「・・・・・邪魔なんですよ。昔は長かったですけど」
「眼鏡も無い方が可愛いよ」
「今日は、何故か眼鏡が見当たらなくてやむなくコンターーー」
そこまで口にしてふと気づく。
そして疑う事も躊躇う事も無く隣で何やら御機嫌な雰囲気の男を振り返ると睨み上げた。
「私の眼鏡・・・どうしました?」
「・・・・君の美を遮る邪魔なあいつなら排除してやったよハニー」
「わぁ、じゃあ私の人生を遮るあなたを永遠に排除してあげようかしらダーリン」
本気の殺意半分で言葉を返せば、何がおかしいのかクスクスと笑う姿。
ああ、本気で一発殴っても許される気がする。
度重なる嫌がらせの数々に本気で苛立って半身を捻って彼とは真逆の外の景色をその目に映す。
一瞬でも忘れたい、離れたい、心に平穏を。
そんな感情で視界から彼を外したのに気配ばかりはそれを許さず、そしてそう簡単に楽しい玩具を手放す彼でもない。
首筋に触れた指先。
首筋と言うよりは多分私の髪。
遊ぶように指に絡めて払ってまた絡めて、、
そして・・・
「長い方がいい」
「・・・・」
「ねぇ、どうせなら・・・1年間、外見だけでも俺の理想的な奥さんになってよ」
また・・・お坊ちゃまの我儘だ。
そして小狡いのが外見だけという要求の譲歩。
内面では絶対に動かない私を知っていて、だったらこれくらいは言う事聞けよ。という暗なる要求。
かといって、本当の夫婦であっても配偶者の容姿なんかは個人の自由ではないだろうか?
そう結論が行きついてもすんなり受け入れるこの人でもない。
ああ、だったら私も狡さを返そうか。
ようやく彼に視線と顔を向けていく。
そして対峙するのは特に嫌味でもない無邪気な頬笑み。
それをしばらく黙って見つめ、さすがに彼の方が困惑をその目に映し始めたタイミングにそれを口にした。
「もし・・・、私を一瞬でもときめかせたら、副社長の理想の姿を目指しましょう」
「・・・・ときめかしたら?」
「でも、今日1日のゲームです。今日中に一瞬でも、」
まぁ、・・・・ないでしょう。
この5年無かったのですから。



