2か所。
多分はっきりその存在を色濃く示しているであろう紅を想像し、気が済んだように私から離れた姿を睨み上げる。
だけどそれも彼を喜ばせる反応に過ぎないんだ。
「おふざけがすぎます」
「いや、理由はどうあれ結婚した千麻ちゃんと新婚初夜に何もなかったなんて醜態を周りに知られたくも予想されたくもないんだよね」
「で?これ見よがしに私に羞恥を晒せと?」
「まぁ、せいぜい俺と熱い夜を過ごした演技?お願いするよ。愛する夫の為なら容易い事でしょ?ハニー」
「1年が1日契約にならない様に今日は背後に気をつけてダーリン」
「ああ、心配ない。プライベートでは隣、会社では俺の前。千麻ちゃんが俺の後ろに回るのは俺に完全に堕ちて溺れて追いかけて来る時だけだから」
満面の笑み。
どうやらこの仕返しで多少の不機嫌を解消したらしい姿に呆れて物申したい。
でもそれをするには時計の示す時間が残酷だと感じてしまった。
そして今更首元を隠す様な服に着替える時間も無い。
本当にどうしてこんな男の妻になってしまったのか。
深く深く溜め息をつくと、今までで一番満足そうに微笑む年下の夫とようやく車に乗り込み会社に向かい始めた。
そこは重役。
運転手が運転する車の後部座席で静かにその身を預け、その横で私は手帳を眺める。
みっちりとスケジュールや重要な事が書きこまれた手帳をじっと見つめペンを口に当てていれば、スッと伸びてきた手がその手帳を抜き取る。
「勤勉なのはいいけどさ、車の中で下向いてたら酔っちゃうよ?」
「ご心配なく。それに今まで携帯で遊びながら下向いてた副社長に言われたくありません」
「遊んでないよ。写真見てただけ~」
そう言って得意げに私にスマホの画面を示してくる姿にウザいと即答する頭。
そして特別見たかったわけじゃない画面に視線を移せば、映り込むそれに一瞬呆け、でもすぐ眉根を寄せ非難する。
「何でそんな写真・・・」
「だってあんまりにも可愛くて」
「人生の汚点の記録・・・・」
「酷っ、俺と千麻ちゃんの輝かしい日の可愛らしい千麻ちゃんの記録じゃない」
言いながら再度じっくりと確認するようにグリーンアイが見つめたスマホには、まさかの私の着たくもなかったウェディングドレス姿が映し出されている。



