「もう、こうして過ごして結構経つのにまだ私のこの格好に誘われるんですか?」
「安い男なんですよ」
フンッと酒を煽りながら照れ隠し。
正直なのはその顔の赤み。
確かに、確かにね、安いわねダーリン。
だけど、
「可愛い」
「あっ?」
「いえ、なんでも」
思わず零した言葉を上手く聞き取れなかったらしい彼が怪訝な表情で確認してくるのに答えを濁す。
当然不愉快の上乗せ。
とうとう舌打ちまで響かせた姿は悔しくてたまらないのだろう。
そして悔しさ隠す様に背けられた横顔を確認し、再び必然であるかの様に頭を彼に預けた。
夜風が抜ける。
長い髪を遊び、火照った身体を心地よく冷やしながら。
そして彼の匂いも巻き上げると私に絡めて消えていく。
ああ、やっぱりこの匂いが好き。
落ち着く。
「ねぇ、」
「・・・はい、」
「俺・・・、安いって言ったじゃん」
「はい、」
「安いんですよ」
「はぁ、」
「っ・・だから、・・・そんな普段でさえ抑制するのに苦労する姿で、こんな可愛らしく密着されたらたまらないんだって!!」
ああっ、もう!
そんな勢いで真っ赤になって声を響かせる彼に唖然として不動になった。
でもすぐに意識の回帰。
そして理解すれば小さく噴き出し笑ってしまった。
「ふっ、ははっ・・・、それでよく今までリードする男を通してきましたね」
「うるさいなぁ!今まではそういうのじゃなかったし」
「つまり、こうして恋人相手なんかだと甘えたいキャラだと?」
「別にそういうわけじゃ・・・」
「安くて可愛いわねダーリン」
「っ・・・絶対にからかってる!!」
ああ、おかしい。
知らなかった。
あなたはこんな風に単純で怒って笑ってムキになって。
会社から出てしまえば年相応の男の子なんですね。
5年も一緒にいたのに初めて知った。
ああ・・・、夫婦も悪くない。
「そんな安いダーリンに、」
「・・・安くない」
「自分がおっしゃったんでしょう」
「いやっ、もう惑わされない。絶対に誘惑されるもんか!
いくらその細く白い足が誘惑的でも、上目遣いが可愛くてもっ、絶対に騙されないからっ!」
「・・・そうですか。残念です、安いダーリンに朗報があったのに」
「・・・えっ?な、なになに?」
「私が普段ノーブラなのはご存知ですよね?」
「っ・・・まさか、勝負下着!?」
安さ全開。
さっきまで誘惑されない。なんて言っていたくせに期待に満ちた眼差し向ける彼は単純でわかりやすい。
甘いのよダーリン。



