鏡の前で久しぶりに自分を見つめた。
普通に仕事をこなしいつも通りに2人でマンションに帰宅して、手早く夕飯を済ませいつもの晩酌に流れ込もうとした矢先。
『やっぱり臭い』
彼のしつこいその一言で、もう面倒だと手早くシャワーだけを済ませて今鏡を覗き込んだ。
でも、ただの容姿の確認。
ああ、まじまじと見ればこんな顔だったと変に納得して洗面所の扉を開ける。
そうしていつもの如くの姿でリビングに戻れば、すでにその姿なく一応視線を一周させる。
いないと再確認終えると場所は特定出来、ゆっくりリビングを横切るとベランダに続く窓に寄った。
そして捉える手すりに身を預け、すでに先に飲み始めている後姿。
「薄情ねダーリン。愛しき奥様の酌なしに先に飲み始めるなんて」
ガラリと窓を開け、特別非難するような響きでない声をかけると、反応して振り返った姿が私を捉えてからふわりと笑う。
「丁度綺麗どころにお酌して欲しかったとこ」
「ああ、では、今すぐコンパニオンでも手配いたしましょうか?残念な事に現在ここにいるのは年増で部屋着の色気のない私だけなので」
嫌味にそう告げて持っていた携帯を冗談にも操作し始めると、困ったようにクスリと笑った彼が私の腕を掴んで自分の隣に引き寄せた。
「・・・・・この美人さんでいいですよ?」
「お気づかいありがとうございます」
わざとらしく馬鹿丁寧に頭を下げると、近くにあった日本酒の瓶を手にして彼に向ける。
もう慣れた2人の酒を酌み交わす瞬間。
天候荒れさえしなければ場所もおのずとこの位置なのだ。
特別乾杯をするでもなくお互いの杯を満たすと自分のペースで各々飲み始める。
夜風と酔いと気を使わない晩酌。
それがひどく心地よくて好きな時間。
彼が外の夜景に体を向け手すりに身を預けるなら、自分は部屋に体を向け手すりに背中を預け彼に並ぶ。
何か話すでもなく手にある日本酒を口にして夜風に浸って、何の気なしに隣にいた彼に視線を走らせれば一瞬動きを止めてしまった。
「・・・・もしかしてずっと見てました?」
「うん、相変わらずそのウィッグつけてると年齢差感じないなぁって」
ちらりと視線を走らせればいつからそうしていたのか頬杖着き私をじっと見つめていたグリーンアイ。



