ああ、もう・・・・。
感情の無い【契約】と言い切れないスタートを切ってしまったんだ。
愛と名付けるにはまだ浅い。
それでも無感情とは絶対言えない。
でも、【信頼】のみの今までから一歩【愛】と言う枠に近づいた?
自覚した事態に動揺し視線を泳がせば、一部始終を傍観しつつも茶化すことなく見守っていた義父と一瞬視線が絡む。
一瞬だったのは、絡んだ瞬間にフッと微笑み静かにその場を去り始めたから。
意地悪な物じゃなかった。
穏やかで安心したような笑み。
あんな笑い方も出来るのだと初めて知った程に。
そうか・・・父親の顔ってやつだったのかな?
去っていく後姿をしばらく見つめ、ゆっくりと自分の目蓋を下した。
色々な感情で暴れる心臓がうるさい。
落ち着いて、落ち着いて・・・。
そう言い聞かせて静かに深呼吸するとスッと目蓋を開け光を通した。
そして微笑む彼を見つめて言う。
「仕事・・・お願いします。副社長」
「・・・はい」
そう、今は会社だから。
仕事をする空間だから。
私は秘書で彼は副社長だから。
これが正解。
私の一言に彼がクスリと苦笑いを浮かべると2人で並んで部屋に歩き出した。



