そのくすぐったさに僅かに目を細めたのに、次いで与えられた刺激にはさすがにビクリと反応してしまった。
首筋に故意に吹きかけられた息。
瞬時に押さえて振り返ればその視線は再び絡まない。
今度はなんだ?と睨み続けていれば、私の体に絡みついていた手が片方外されゆっくりと指先で私の短い髪を遊び始める。
そして感触を確かめるように指でくるくると巻きつけたり離したりを繰り返し、不意にその唇が動きだす。
「千麻ちゃんは俺が何をどう言っても反応してくれないんだね」
「それはまた心外な。割と全力で返してると思いますが?」
「うん、そうじゃなくて・・・女の子として反応を見せてくれないね」
「・・・・」
それは・・・、
仕方のない事だと思いませんか?
そしてそれはまた・・・
「お互いさまでは?」
はっきりと迷いなく口にすれば、少し驚いたようにグリーンが揺れる。
それをしっかり理解しながら見つめ上げ、逃げる事なく事実を突きつける。
「昨日の今日・・・」
「・・・・」
「人の気持ちはそう簡単に前の感情から切り離して別に向けるなんて出来ないんですよ?」
「・・・・千麻ちゃんは、まだ・・・・あいつが好き?」
問われた質問に少し心臓が早くなったと思う。
瞬時に浮かんで消えたのは別のグリーンアイ。
だけど対峙する現実のグリーンアイの存在にすぐに意識を戻して見上げた。
「副社長はまだ彼女を愛しておられるでしょう?」
今度その目に動揺を映したのは彼の方。
そして分かりやすい返答で分かりきっていた返答だ。
タイミング良く響いた到着音と消える浮遊感。
ゆっくりと開いた扉から外気が流れ込んできて、少しの息苦しさが薄れた。
声を発しなくなった姿に気を使うでもなくスッとその身を動かし始めれば、開いて間もないのにしっかりと行く手を阻み始めた扉。
当然犯人である彼を振り返れば不機嫌に眉根を寄せて真横の操作盤の閉を押している。
さすがに度々の行為に片手を腰に当て非難するように彼と対峙した。
「仕事です」
「仕事より重要だよ」
「何がご不満ですか?」
「全部だよ。千麻ちゃんの全部」
動く事のない密室での不満の限界。
言葉を発する度にさっき取り入れた新鮮な空気が無情にも消えていく。



