夫婦ですが何か?




精神安定剤。


吸って、逃さない様に息を止めて。


それでも重なる唇から彼の吐き出す熱い息が口内を満たして。


クラリとするのは香りのせいなのか酸欠になる程のキスのせいか。


きっと両方だと思うのに息苦しくても求めて縋って彼の体に腕を回す。


皺になるほど彼のシャツをしっかり握って、匂いとぬくもりと扇情的ともいえる濃密なキスに溺れて沈む。


本当に・・・・上手い。


気を抜けば一気に全て翻弄されそうな。


あっ・・・ダメだ。


全てを手放しそうになる一瞬に自ら唇を離すと目が回る。


多分、泣きすぎやキスによる酸欠と疲労。


ぼんやりとした思考で彼と自分の唇を繋ぐキスの余韻が扇情的だと感じる。


そしてゆっくりと唇から視線を上昇させ綺麗なグリーンアイと視線を絡めた。


もう怒りはなく、いつもの当たり前である綺麗な緑。


ただそれである事がこんなに落ちつく事であったなんて。



「・・・・・確かに、欲求不満で貪欲そうだね千麻ちゃんは、」


「・・・えっ?」


「・・・これでも程々に経験豊富ですから。・・・キスだけで相手がどの程度貪欲で自分に応えてくれるかは把握できる」


「・・・・・ダーリンに私が扱える?」


「ん~、どうだろう?少しばかり自信ないかな」



意地悪に頬笑み私の欲求の強さをあえて指摘してくる姿に眉根を寄せる。


でもそれも作戦だったのかクスクスと笑った彼がすかさず寄った眉根に口付け抱きしめてきた。


再び強いほろ苦く甘い香りに包まれアルコールより強烈にふわりとした感覚に陥った。


静かな空間のせいかトクントクンと彼の鼓動が密着している体に伝わって、それすらも今の私を安定させていく。


おかしい、絶対に落ちつく事ないと思っていた色々な感情が静かになった。



「・・・・・落ちついた?」


「・・・・・はい、」


「じゃあ、一つ・・・・確認してもいい?」


「・・・はい?」



改まって言われた言葉に疑問を響かせて、スルリと緩んだ腕から解放されると代わりに左手に絡んできた彼の指先。


そして持ちあげられお互いの視界に捉えて思い出して納得。



「・・・・これ、何?」



苦笑いで詳細を聞いてくる彼にタイミング的に少し照れくさくて眉尻を下げた。


それでも、



「コレは・・・いつかの仕返しと言うか・・・」


「・・・・・ああ、でも赤くない」


「あなたもこの指に赤い石なんてはめなかったでしょう?それに・・・・愛と言うよりは信頼の色ですから」



そう告げれば複雑だけども満更じゃなさそうな頬笑み。


そうして指先で確認するようにそれに触れる。


左の薬指。


失った輝きの代わりに巻き付けた緑の細いリボン。