あり得ない。
なんて失態。
何を大衆の面前で宣言してしまったんだろう私。
そして何が悲しいって・・・、一番聞かれたくない彼に私があのキスに感じていた事を暴露してしまったんだ。
ダメだ・・・顔、合わせられない。
「千麻ーー」
ビクリと体が反応した。
今までの癒やす様な雛華さんの声音でなく、今一番私の心を乱す常に近くにある声音。
抱えていた膝に顔を埋め更に縮こまる。
今・・・、今はどうしても会いたくない。
今はダメだ。
「いつまで閉じこもってるつもり?いい歳して迷惑だって事も理解してない無能な女だったとは知らなかったけど?」
「茜ちゃん・・・・」
ああ、雛華さんが庇う様な声を響かせている。
だけども黙ったのは彼が威圧でもしたんだろうか?
そう予想したのは彼の声が私に『失望』した時のままの低い低い不機嫌な響きだから。
考えてみたらその時の彼の命令にも逆らってあの会議に参席したんだ。
そして彼の役に立つどころか噂の渦中に巻き込んで彼自身も羞恥に晒してしまった現状。
絶対に本気で怒っている。
「千麻っーー」
「っ・・・すみません!!」
「・・・・・顔を見ずの謝罪に意味はないと思うけど?誠意も伝わらない」
「・・っ・・・」
言葉が思いつかない。
頭が回らない。
羞恥や畏怖や色々な感情が入り乱れてまともな思考が出来ないでいる。
いつもらしい自分さえ分からず、感情のままに声を響かせればこうして彼の怒りを買うほど。
こうしている間にもきっと、どんどん築き上げた信頼が崩れていっているのに。
「千麻・・・・・これ以上、『失望』させないでくれない?」
馬鹿正直な体。
その言葉に畏怖して瞬時に動き出した体が扉の前に立つ。
それでもすぐに鍵を開けられなかったのはやはり存在する羞恥心。
でも勝る彼からの失望の恐怖にガチャリと解錠音響かせ天岩戸を開けていく。
軽く隙間を開けるように開いたのは私。
だけどすぐに勢いよく扉を開いたのは彼。
バッと薄暗かった空間にローカの明かりが入り込んで目が眩み、でもすぐに遮るように前に立った姿に心臓が強く反応した。
不機嫌そうな彼の表情とグリーンアイ。
今日はこの表情ばかり見ていると瞬時に思った。
厄日なのかな。
不機嫌な姿のままの彼が一歩踏み込んで、それに殉じて一歩身を引く。
すぐに彼の背中でパタリと閉まるドアでまた少し薄暗くなった空間。



