「驚くね。千麻を泣かせるほどあの旦那様に器量がある?独占欲丸出しの余裕のない男に感じたけど?」
「その答えは的確で否定はしないけれど。・・・彼を馬鹿にしないで」
「へぇ、庇っちゃうくらい忠誠心強いんだね。愛も無いのに結婚までしちゃうくらいだしね」
「・・・・そうね。正直・・・彼を愛してるとかよく分からないわよ。結婚したのも同情に近いし」
「だろうね。・・・・じゃなきゃ、千麻がこんなに欲求不満になってない」
ああ、腹が立つ。
この頬笑みも見透かした様な話し方も。
何が一番腹が立つって・・・・。
「臭い」
「はっ?」
「この匂い・・・嫌い」
嫌悪を示して鼻を手の甲で覆うと、確かめるように自分の体に視線を移した恭司が呆れ声を響かせた。
「酷いなぁ」
「イライラするのよ」
「嫌いって・・・、これ、お前が選んで俺にくれたやつだろ」
「・・・・え、」
「つきあってる時だからかなり昔の話だけどね。それに、お前も気にいってつけてた筈なのに・・・・」
確かに・・・・確かにね。
記憶にありますとも。
うん、ある。
あるけれど・・・・・あれ?
同じ匂い?
なのに・・・・、私の嗅覚がおかしいの?
私の好きな匂いじゃない。
「・・・・・・好きじゃない」
「忠誠心に少し酔いすぎじゃない?千麻」
「・・・・・何が言いたいの?」
「酔いすぎて、恋心と勘違いして隣に立って」
「はぁ?」
「勘違いの恋心じゃ欲求不満は解消しないって事。若さと見た目だけの彼に千麻の相手は無理だと思うよ」
あっ、不快感の絶頂。
匂いと声と含みある笑み。
おかしい。
全て全て好ましいと思っていた瞬間があった筈なのに。
今は全て体が拒絶する。
違う。
コレじゃないと。
その拒絶感絶頂の自分の手にそっと絡みつきそうな彼の指先に瞬時に反発。
気安く触るんじゃない!
自分の最近の短所。
人に簡単に手を上げるのは気をつけよう。
うん。



