一瞬、その全ての視線を感じた気がする。
緊張感あるその場にいきなり飛びこんだのだから当然と言えば当然。
すでに始まっていた会議に遅れて雛華さんと参席すれば、扉の開閉に意識を移したその場の重役たちの視線を集めた。
当然、彼の視線も。
チラリとこちらに移った視線が冷たく私を射抜くとすぐに外される。
一瞬緊張した体は正直だ。
意気込んでも命令違反でここに来た事実に引け目を感じる。
そんな私の背中を軽く叩いた雛華さんがにっこり微笑むとそのまま自分の席である彼の隣に向かった。
そして静かに座ると書類を見つめた。
その姿を確認し、ゆっくりと壁際に歩いていくとこの問題を引き起こした元凶である恭司の姿を視界に捉え軽く苛立つ。
涼しげな顔で会議の流れに集中し私に特には視線を向けない。
向けてほしくも無いけれど。
そう、今は上司としての彼の為に秘書として専念したい。
スッと壁に背を向けると会議の声に耳を澄ます。
内容を理解し思考し、彼の為に先を読みながら内容を記録する。
失望なんてさせない。
むしろ、言わせるものか。
私ほど彼にとって有能な秘書はいないと知らしめてやるんだ。
『私以上はいないでしょ?』
そう言って笑ってやりたい。
永遠に終わらないのかと思うほどの会議でも時間がくれば終わる。
ある程度のところで結局最後の決定打を打つのは我が有能なる社長の一言。
その言葉でまとまりを付けると会議はゆるゆると閉幕していくんだ。
そして僅かなる歓談の時間。
重役達も堅苦しい会話から外れ隣合う人達と会話し始め表情も緩む。
一気に緊張感解けた空間に和気あいあいとした声が響き、周りの秘書たちもどこか力を抜き会話している。
持っていた手帳をゆっくり閉じると息を吐く。
そして視線を彼に走らせれば雛華さんと何やら会話している姿。
以心伝心?
不意に見慣れたグリーンアイが私を捉え、まだ鋭さ残る表情で立ち上がるとゆっくり動きだす。
でも、遮断。
割り込むように絡んできた匂いに眉根を寄せ、私の前から影を落とす姿を見上げて睨んだ。
「・・・・泥棒」
「何の事?」
「指輪・・・・盗ったでしょ?」
「ああ、ちょっと色々な角度から見てみたくて・・・・・、まさかそのせいで泣いたの?千麻」
悪びれず楽しげに笑う恭司が全て見透かしたように泣いた痕跡残る私の頬に手を伸ばしてくるのをすかさず避ける。
当然そうする事を理解していた恭司はクスクスと満足げだ。
最悪な性格。
自分の男の趣味を疑うほど。



