ムッとしながら睨んでも、今は私の完全なる負けだろう。
微笑んだ姿が悪びれる様子も無く距離を離すと椅子に寄りかかった。
「本気でキスなんてしないよぉ。俺芹ちゃん大好きだもん」
「ごちそうさまです。もうお腹一杯なんですが」
「俺も今日1日で茜ちゃんと千麻ちゃんの仲良しでお腹一杯だけど?」
「絶賛喧嘩中ですが?!」
「喧嘩出来るくらい仲良いってことでしょ?」
「こじつけ・・・」
「いや、だってさ。仕事の関係だけだった時は千麻ちゃんもここまで感情的に茜に反応しなかったでしょ?」
「・・・・」
「多分、さっきみたいに仕事の面で注意されても落ち込むけど泣いたりするかな?」
本当に・・・痛いところを突いてくる人。
問われてみれば確かにそう。
仕事のミスで泣きたくなる事はあっても本気で泣いた事はないし、泣いてもこんな大ぴらに泣いたりしない。
自分でコントロールして家で落ちついた時にひっそりと悔し涙を流す程度だろう。
なのに、ここまで豪快に泣いてしまったのは、勿論『失望』の言葉に打ちのめされたのもあるけれど。
上乗せされた彼の傷ついた様な怒りのせい。
また・・・傷つけてしまった。
「やっぱり・・・相性悪いです」
「あらら、回帰?」
「私は・・・言葉を飾る方法なんて知らない。思った事をそのまま言ってしまうし、それを今更直そうとも思わない。・・・・だけど、それが彼を傷つける事になってる・・・・」
「うん・・・傷ついてたね」
「だから、・・・私は癒やしにはならないんです。彼が求めるよな反応なんて、」
出来ない。
私は変わらない。
「・・・・茜は別に、作った様な反応は求めてないよ」
気がつけば落としていた視線を雛華さんに戻しながら顔を上げた。
視界に捉えたのは少し真面目な表情に小さく浮かぶ笑み。
そして諭すような穏やかな緑。
不思議だ。
今にもあの庭の風を感じそう。
「千麻ちゃんは千麻ちゃんらしい反応だって理解して茜は千麻ちゃんを好きなんだよ」
「・・・・」
「なんとか縛り付けたくて、独り占めしたくて仕方ないのに千麻ちゃんの方が気紛れにその手を離れてる。
・・・あれだ、懐かない猫にどうにか首輪付けたのに気紛れにいなくなって他人の痕跡付けて帰ってくるみたいな」
なんだろう、妙に納得いく例え話なのに複雑だ。
私、浮気者みたいじゃないですか?



