そう皆が皆その【好き】【嫌い】の二択で測ってくるから私の考えと同調しないのだ。
もしその二択に自分を当てはめれば【好き】になる。
でもそう答えれば必然的に皆結論に結び付けようとする。
そういう事じゃないのだ。
「【尊敬】」
「えっ?」
「私が【好き】や【嫌い】以上に彼に抱くべき感情です。それがあったから・・・どんなに我儘なお坊ちゃまでもついて無理要望を聞いてきたんです」
「・・・・尊敬・・・」
「私には・・・【好き】なんて感情より大きくて大切なことなのかもしれません。だから・・・・仕事の上での方が彼を誰よりも理解して助ける事が出来た」
「・・・・その尊敬は今も継続?」
「・・・・いつだって。私は彼の隣で彼の高みに登る姿を見ていたいんです」
「・・・・うーん・・・、よく分かんない」
自分なりに噛み砕いて言ったつもりだったのに、更に疑問に染まる姿にそれ以上の理解は求めない。
もしかしたら私の感覚の方がおかしいのかもしれない。
だから他者にそれを全て理解してもらおうなんて思わない。
単純な話。
尊敬し続けていたいのだ。
そこに余計な感情が絡んだら、ただ純粋に尊敬していた気持ちに自分の感情混じって崩れてしまいそうで。
特に・・・恋愛感情ほど厄介で毒性の強い物はないから。
なのに・・・。
気がつけば指先で触れていた唇。
繰り返し重ねられた唇の感触を無意識に思いだしていた自分に一瞬の羞恥。
ああ、もう充分にジワリジワリとその危険性が高まっている。
気がつけばあのキスが気持ちいいと思い拒む事も忘れ受け入れていたり、こんな風に簡単に涙を流したり。
それは全て・・・・彼に気を許した分だけ流し込まれた毒による反応。
「・・・っ・・・ムカつく」
「ごめん・・・」
「いえ、雛華さんじゃなく馬鹿な甥子さんの事です」
思い返せばあの男が全て悪いのだ。
1年契約だと告げた上で婚姻を結んだのに、悪戯に迫って求めて振りまわして私生活を塗り替え作りあげる。
そんな事をされたら当然仕事の関係にも影響すると分かっていただろうに。
「彼が何をしたいのか私には理解できません」
「そう?俺は千麻ちゃんより茜の方が分かりやすくて単純だけどなぁ」
「だって、どう考えたって何もない方が仕事的にも1年後の契約完了にも都合がいいでしょう?!なのに何であの人はああやって悪戯に人を振りまわすんですか!?」
「・・・・・・そんなの、千麻ちゃんを愛してるからでしょ?」
何言ってるの?
そんな唖然とした雛華さんの表情に同じ感情を乗せて返した。
何言ってるの?



