情けない。
そう思っているのに意思と関係なくぽろぽろと流れ出る涙が憎らしい。
ここまで涙を流すのはいつぶりだ?
そうして記憶を回想してみれば以外と浅い過去にそれが思い当った。
あっ、そうだ馬鹿な女たちにブチ切れた後に彼の前で号泣していたんだった。
そんな失態的な過去を思い出せばさらに打ちのめされて泣きたくなる。
もう、今までの自分が壊れてばかりだ。
「・・・とに、相性最悪・・・」
「えっ?」
ぽつりと零した言葉に雛華さんが反応して振り返る気配がする。
それでも泣き顔を真正面から見られるのが恥ずかしくて自分の手先に視線を落とす。
そして捉えた輝きのない左手の薬指。
「必然なのかなぁ・・・・」
「千麻ちゃん?さっきから独り言?」
「すみません・・・・、全部彼と私に関する私的な独り言です」
「彼・・・・茜のこと?」
少し思案してから【彼】に当てはまるべき人物の名前を確認してくる姿に小さく口の端を上げると頷いて肯定を示す。
ようやく丸めていた体をすっと起こすとゆっくり息を吸って吐いた。
濡れた頬がわずかに動くだけで風を感じてヒヤリとする。
それでも流れ出るほどの水分は止まっていて、やっと雛華さんを振り返ると疑問を乗せたまま見つめてきていた。
「つくづく相性悪いんですよ。私と彼は・・・」
「・・・そう?息が合ってると思うけど」
「息はあってるのかもですね。それは今までの仕事の上での関係があったから。でも・・・私的な感情が入ると私と彼はどこかうまく噛み合わない」
綺麗にクルクルと回っていた歯車が、この契約を結んだ時から軋み出して時々止まる。
何とか問題を解決してもまたすぐに別の問題で止まる。
そんな事を繰り返すうちに徐々にずれた歯車が何かのはずみに外れて壊れてしまいそうな。
私生活だけでなく、仕事の良好な関係の歯車まで引きずられて壊れそう。
どこか気が付かないうちに危険予測していたらしい自分がぎりぎりの一線を引いて生活を共にしていたのに。
じわりじわりとその線を踏み越えてくる彼の存在でまさに危惧したような状況になりかけている。
こうして、仕事にも影響した。
「やっぱり・・・永遠にはならない2人なんですよ」
「・・・・1年契約は今も健在?」
「・・・それこそ一度だってその条件を取り下げたことはないです」
「分からないなぁ、離婚したいくらいに茜が嫌い?」
「・・・・その問いは度々様々な人から問われますが答えはNOです。どちらかと言えば【好き】【嫌い】の物差しで測っていないのですよ」
そう告げてみれば疑問に眉寄せる表情に小さく笑った。



