「はぁ・・・千麻ちゃんさぁ、俺たちの関係をよく仕事の延長として語るよね?」
「・・・・はい」
「じゃあ、俺も今あえて【仕事】として不満を言えば・・・
酷く失望したよ千麻ーーーーー」
「・・っ・・・・」
「・・・午後の会議は出なくていい。部屋でデスクワークしてろよ」
腕時計を確認した彼が私の同席を拒むと、私の代わりに軽く焦った感じに声を返す雛華さん。
「茜・・・、何もそこまで・・・」
「何だよ?こんな注意力散漫な秘書、会議に同席させてもまともな理解も期待できないよ」
あっさりと口にされた無能の響き。
役に立たないと宣言した彼が私に視線も向けずに歩き出すのに、私ができるのはただ一つ。
「承知・・いたしました。いってらっしゃいませ・・・・」
声が軽く震える。
喉元が熱い。
軽く一礼してしまえば目頭の熱さに必死で堪える。
彼が怖かったんじゃない。
彼に失望され、見放されたことが苦しかったんだ。
そして・・・・彼にこんな風に見放されたのは初めてで、今まで築いてきた信頼に初めてヒビが入った気がする。
あっ・・・困る。
顔が・・・・上げられない。
「・・・千麻ちゃん、」
響いた柔らかい声音と差し出されたハンカチ。
顔を上げれば頬を涙が伝って、潤む視界に捉えたのは困ったように微笑む雛華さんの姿。
「・・・・会議・・遅れますよ」
「うん、だからもう行くけど・・・・、あんまり気にしちゃダメだよ?」
「・・・・・・・・無理です・・・」
「うん・・だろうね」
「無理ぃぃぃ・・・」
「だってあいつ・・・ちょっと酷いもん。千麻ちゃんが一番傷つく方法で怒りぶつけたもん。・・・・・まぁ、それだけ茜も傷ついてキレてたって事なんだけどさ・・・」
ちらりと彼が立ち去った方に視線を走らせた雛華さんが、すでに姿ない彼を思い出して苦笑いを浮かべる。
完全に武装を突き崩され涙零す私をそっと自販機前の長椅子に座らせると雛華さんも隣に座った。
「すみません。・・・すぐに泣き止みますから・・・」
「ははっ、いいのに。正直会議なんて面倒だし」
「・・・・仕事してください」
「今は俺の優先順位は仕事より千麻ちゃんなんですよ」
「無能に関わっていたら無能になりますよ」
「フッ、かなり茜の言葉に落ちてるね千麻ちゃん」
ええ、かなり。
普段の嫌味な言葉のそれなら軽く流して終わるというのに。
仕事としてそれを示された失望に打ちのめされて立ち上がれない。



