そしてそれは私も身構える反応。
来るだろうか?嫌味で執拗な言葉の重圧。
ある程度の反応を予想して彼と対峙すれば、無表情に辛辣さを移して静かに見つめ返す姿。
彼にしては珍しい。
そう思ったタイミングに下に落ちたグリーンアイが何かに気が付いて心無い笑みを口元に浮かべた。
何だ?という疑問は乱暴に掴まれ自分の視界にも止まる高さに持ち上げられた手で理解した。
そして驚愕。
自分の手をはさんで向こう側で冷たい笑みを浮かべる男。
「そりゃあ・・・こんな風にフリーをアピールした手元じゃ、元カレも誘われたって勘違いしてキスするんじゃない?」
違う。
そう否定を返したくても現実その輝きを失っている左手の薬指。
何故?
ああ、そんなのわかっている。
恭司の【なんとなく】の対象。
それこそ多分、あのキスのタイミング。
あの不意打ちのキスに気を取られている間に確かに私の左手に絡んでいたあいつの手。
そして抜き取られたんだ。
不覚。
そしてさすがにこれは彼の怒りも買うだろう。
「・・っ、すみません」
「何が?」
「決して自ら外したわけじゃ・・・」
「でもしてないじゃん」
「・・・・・多分・・・盗られたかと・・・」
盗られた。
つまり盗られるような隙を彼に見せていたという申告。
だからこそ少し躊躇いながら口にすると、軽く細まったグリーンアイが怪訝な姿で私を覗き込む。
「注意力の塊の完璧な千麻ちゃんが誰かに身に着けているものをあっさり盗られちゃうんだ?」
「すみません」
「・・・そのさぁ、最初っからの『大したことじゃないんですが』って態度がすっごいむかつくんだよね」
パッと乱暴にふり払われた左手。
さすがに心臓が変な跳ね方をして速度を上げる。
「はっきりすっきり全部吐き出せば変な疑いもなく俺も笑って『そっか~』とか飲み込むとでも思ってるの?」
「私は・・・・ただ、懸念材料は排除しておこうと・・」
「そう言って、大したことない感情のない彼に悪戯に指輪とか盗られてんじゃん。事実ちょっかいかけてきてる元カレの存在にどうして千麻ちゃんの問題ない発言が信用できんだよ?」
「それは・・・・」
ああ、返す言葉がない。
今この状況で私が何を言っても理由にはならない。
自分の非を認めるしかない現状で口を閉ざせば彼の深いため息。
ああ、言葉より重くのしかかる。



