「体の相性がいいんです。それでも後半恋人でなかったのはあえて恋人でいることに意味がないように思えたから。お互いにただ条件満たす時間があれば甘ったるい時間は不必要でそれが楽だっただけです」
そう、ただそれだけの関係。
だから恭司との時間の記憶に酸いも甘いもないのだ。
そして今更再会しても過去の恋にときめき感じるものでもない。
ああ、やはりまた会ったな。
そんな感じ。
それに、一応後腐れなく今のうちに告白しておくべきか。
後々発覚してまたこの面倒な時間の再発はごめんだと意思が固まる。
ずっと雛華さんに向けていた視線をようやく彼に移せば、さすがに驚愕の表情はやめ複雑な無表情。
また不機嫌のそれだろうか?
やはり今のうちにすべて終わらせておこうと過去というには余りに早すぎるさっきの時間の不道徳を口にした。
「さっき不測の事態で彼にキスされました」
「・・・・はっ?」
「うっかり驚いて反応遅れましたが、特別感情的な物ではなく事故のようなものですからお気になさらず」
あった出来事の報告。
特別動揺もなく本気で感情の無かったさっきのキスを特別問題視する必要はないと判断、宣言して腕時計を確認した。
ああ、もうすぐ午後の会議が始まる。
そう気が付くと今までの話を終了だと断ち切るように声を響かせ顔を上げた。
「もうすぐ会議のーー」
時間です。
そう続けるつもりが口の中でその部分はとどまり不動になる。
金縛り。
それもかなり強力な。
「・・・・・・何それ?」
響いた嘲笑交じりの低い声にもゾクリとする。
久しくここまでの彼の威圧を感じていなかったと思い、そして今それを体感していることに焦燥感。
グリーンアイはいつだって綺麗だ。
でも綺麗だからこそその用途で鋭く鋭利なものになる。
「・・・元カレだけど・・・気持ちはない?欲求不満満たすだけの関係?・・・・だからキスしてもそれは意味はないから流せって?・・・・・・・そういうこと?」
「・・・・・はい、」
確かに、言い方やどこか取り方に嫌味を感じるけれど間違ってはいない。
だからこそここでも私は私らしく言い訳もなしに肯定を返してしまう。
そしてその肯定を聞いて落胆した表情を見せたのは彼のやや後ろに立っていた雛華さん。
『あ~あ』と言いたげな微妙な表情で私を見つめすぐに彼の反応を伺うように視線を逸らした。



