隣に座り窓の外を眺めている恭司。
それをちらりと確認しそれ以上の興味を示す事もなく食事に戻る。
と、言ってももうすでに完食に近く最後の卵焼きを口に頬張るとパタリと蓋を閉めた。
ほぼ同時。
「千麻、欲求不満でしょ?」
その一言には思わず口から卵焼きを落としそうになった。
でも、この男が言うのは予想外ではないと理解しているから驚いたりしない。
とりあえず口の中身をごくりと飲み込むとゆっくり視線を移してにこやかな男を見つめる。
「だったら何?」
「否定はしないんだ?」
「否定したら嘘になって、嘘ついた隙があなたのごちそうになるだけだもの」
「はは、やっぱり千麻はいいね」
やっぱり千麻は・・・、つまり比べる対象が多々いるのだ。
いや、別に恭司は浮気者とかではない。
彼女という名目つく相手がいれば当然のことながら他の女と時間を共有したりしない。
ただし彼女がいない間の彼にはその欲を解消するだけの相手が多々いると思われる。
まぁ、別に個人の自由だし恋愛の仕方は自由だろう。
相変わらずな女性関係なんだろうな。と改めて感じて自販機を見つめていれば、左手に絡み付いてきた手の感触に視線を戻した。
持ち上げられた手は彼の顔の近くに引かれ、概ねその視線は私の薬指の指輪に注がれている。
「・・・・ふーん、千麻好みのデザインだね」
「そうね」
「一緒に買いに行ったの?」
「別にいらないのに突然はめられた」
「なるほど。サイズも好みも理解してる旦那様なんだ?」
「腐れ縁の5年奉仕してきたからね」
「なのに・・・・性に関しては不一致?」
「・・・・・」
思わず非難するように見つめてしまえば、実に楽しげに微笑んで私の指輪をいじる姿。
ああ、感情的になったらこの男が喜ぶだけだ。
上手く付き合うには変な隠し事なく堂々と張り合わないと簡単に追い詰められる。
「そこそこ君の旦那様の噂も聞きかじってるけど・・・。もしかして見かけ倒しで千麻の欲を埋めるほどは手練れじゃないのかな?」
「さぁ?夫婦と言っても関係を持ったことが無いの」
「それまた興味深い。プラトニックなんて千麻には似合わないと思うけど?」
「夫婦と言ってもそれこそ色々事情があるの。これ以上はプライバシーよ、その興味本位はもうお終いにして」
終わり。というように左手に絡んでいた手を振りほどきゆっくり立ち上がろうと腰を上げた。



