そしてしばらく間。
私は無言で食事を進め、目の前の男・・・恭司は私を意味ありげに微笑んで見ている。
そしてゆっくりと核心なのか触れ始める話題。
「・・・・でも、驚いた。千麻が本気に結婚するなんて」
「・・・・・メールはしたわよ」
「ああ、入籍後に【結婚したから】の一言メールね」
「メールしただけ親切でしょ?どうせ『ふーん、』って感じに読んですぐ他の事に集中したでしょ?」
「うん、よく分かってるね」
にっこりと正解と言いたげに微笑む男に呆れも落胆もしない。
こういう男なのだ。
自分の気にいっているものにもあまり執着を見せず、本当に気にいってるのか疑いたくなるほどで。
例えば本人いわく溺愛の恋人がいたとして、その彼女が目の前で他の男を選んでも微塵もその頬笑みを崩さずあっさりとその手を離すだろう。
正直・・・この男が苦悶の表情とか悲哀とかを浮かべた姿を見たことが無い。
どんな時でもどこか妖艶で策士の様な頬笑み携え、涼しい顔で人を言い包める。
そんな男。
そしてあろうことか・・・・・私の元彼でセフレだった男。
言い訳すれば・・・彼以外にセフレなんていた事はない。
そう、彼であるから交際と言う付き合いが切れても時々関係していたが正しい。
「夫婦ごっこは楽しいかい?」
「それなりに、」
「たしかに・・・『ふーん』とは思ったけど、驚いたのも本当だよ」
「残念。恭司の驚いた顔見るには対面して宣言すればよかったわ」
嫌味交えてそう切り返せばクッと笑み強めた恭司の口元。
その目も細まったことからコレは形だけでなく笑っている証拠。
そしてようやく自販機から体を起こすと長身の体を折り曲げ私の顔を覗き込む姿にまっすぐ顔を上げて見つめ返した。
「本当にさ、・・・結局のところ、何だかんだで千麻は俺の奥さんになるんだと思ってた」
「そうね、私も何だかんだで恭司の奥さんになるんだと思ってたわ」
一応説明。
この会話に特別感傷的な物はない。
ただお互いに漠然と思っていた未来の暴露と、思惑が外れた事の確認をしただけなのだ。
そして私の返事に満足そうに微笑んだ姿が再び体を起こして今度は私の隣にスッと身を置いた。
フッと香り強まる彼の匂い。
しまった、今の今まで忘れているくらい馴染んでしまっていたと不覚に思った。



