夫婦ですが何か?




不愉快。


そんな心中露わの表情でその場をチラリチラリと視線を走らせている彼に疑問を抱き、多分同じ様に疑問を抱いていた雛華さんが切りこんで口を開いた。



「どうした茜ちゃん。あっ、疲れた?」


「・・・・・・臭い」


「はい?」



雛華さんと私の二重の声。


不機嫌そのままにポツリと彼の口から零れた言葉に更に困惑しこちらも眉根を寄せてしまう。


それでも【臭い】と称した匂いの元を探す様に視線を走らせた彼が、最終的に私に視線を留めると目を細め見つめる。


何だよ?


そう思った直後にすばやく私の腕を掴み引きよせた彼が、公衆の面前と言う事を忘れてなのか私の首元に顔を寄せた。



「・・・・・臭い、・・・・千麻ちゃんからだ」


「失礼な・・・、汗なんかはかいてなかったと思いますが」


「違う。体臭じゃない・・・何だコレ、メンズ物の香水?」



あっ、と、瞬時に思い当たるその匂いの元。


言われて意識すれば確かに自分から香るあの匂い。


それでも決して強烈な物ではなく微々たる移り香に過ぎず、逆を言えばよく気がついたものだと感心する彼の嗅覚。


それでも彼にとってはどうやら相性の良くない匂いなのか更に眉根寄せると嫌悪丸出しで私に問いつめるように射抜いてくる。



「・・・・俺この匂い嫌い」


「はぁ、そうは言われてもただの移り香です」


「なんっかイラっとする・・・」


「さっきまでこの匂いの人が隣に立ってましたから」


「・・・・・・不愉快だ」



おい、いいかげんにしろ。


移り香まで不満を言われたら防護服でも着てそこに立てと言いたいのか?


あまりのしつこさに自分の眉根も寄っていたんだろう。


気がつけばおかしな睨みあいになっていて、通り過ぎていく人たちがチラチラと振り向いて行くほど。


そして唯一この状況を緩和できる雛華さんが私の肩にスッと顔を近づけ、軽く匂いを嗅ぐとゆっくり離れた。



「ん~・・・そこまで嫌な匂いでもないけどなぁ・・・」


「うん、でも何かこう波長が合わなくて気持ち悪いんだよね」



雛華さんが理解しがたいと方眉を上げるのに彼は生理的に受け付けないと突っぱね、最終的には私の腕を解放し距離を少し離した。


一瞬ムッとしつつも腕時計の時間に意識が走り確認すると2人を見上げて促していく。



「お2人とも、そろそろ出発されないと遅れてしまいます」


「あ、もうそんな時間?」



雛華さんが自分の腕時計でもそれを確認すると彼に視線を移して行こうと仕草で伝えていく。


それを確認し、私も自分の仕事だと玄関まで見送ろうと足を踏み出した瞬間。