そしてようやく思い出したように腕時計を確認し、忘れていた仕事に意識を移した。
「お2人共、そろそろ会議の時間です」
そう、今日は少し大きめな全体会議の日で、普段は不参加許される雛華さんも顔を出さざるを得ない日なのだ。
社長、副社長、その他重役と取引先の重役が参加する場合もある。
だからそんな会議に遅刻などもっての他で、早くしないと顰蹙ものだと行動を煽った。
すでに会議室に向かおうとしていた雛華さんはいいとして、彼と私はまだ室内に入ってもいない。
手に持っている荷物を急いで部屋に入りデスクに雑に置くと必要な書類をその手にローカに戻る。
その間呑気にローカで和気あいあいと会話して待っていた美麗2人組。
クソッ、呑気でいいな。
「お待たせいたしました。行きましょう」
そう一言響かせるとヒール響かせエレベーターホールに向かった。
会議室は自分たちがいる階より3つ下。
エレベーターでその階に降りればすでに会議に参加する人たちが足早に歩く。
それをチラチラと確認し今日参加する予定の会社の重役姿を確認していく。
あの会社とあの会社は参加。
でもあそこはまだ姿がない。
そんな事を冷静に判断しながら歩き続け、時々後ろの2人を意識する。
今もそうして背後で楽しげな2人を捉えた瞬間だった。
鼻を掠めた匂いに眉根が寄った。
確かめるように前を向いても視界には様々な人が移り変わって消えていく。
気のせいだろうか?
自分の感じた懐かしいけれどあまり好ましくない記憶の香りに冷静さが揺れ動く。
そしてまた視線を横に走らせたタイミング。
「何か気になってる?千麻ちゃん」
投げかけてきたのはもう当たり前の声のトーンと生活を共にしている方のグリーンアイ。
声をかけられそのまま振り返ると似たような疑問顔で私を見つめる綺麗な2種類の緑の目。
「いえ・・・なんか・・・違和感?」
「ん?体調悪いの?」
「体調はすこぶる快調なんですが・・・・こう、背筋をゾクゾクと・・・」
言いながら今もなんだか落ち着かない感覚にきょろきょろと視線を走らせる。
でも、特に異変なく見知った会社の重役の顔ばかり。
やはり気のせいか。と結論付けるとゆっくり息を吐いてから2人を順に見つめ何でもないと意思表示。
「すみません。お席にお着きください」
そう促すと私同様どこかすっきりとしない表情で2人も窓際の中央よりの席に着いた。
当然今は空席の中央は彼の父が座ることになる。



