「今ほど馬鹿・・・甥御さんがおっしゃったのは何の信憑性もない単なる被害妄想な嫉妬ゆえの言葉ですのでお気になさらず」
「あ、はい・・・」
「おい、夫を馬鹿呼ばわりかよ?」
「芹さんにもおめでとうございます。とお伝えください」
「ありがとう、千麻ちゃん」
「無視かよ・・・」
「ああ、それと・・・婚姻届を提出の際は離婚届を貰ってきていただけないでしょうか?」
「えっ?」
「もし可能であるなら雛華さん代筆で彼の名前とはんこ記入の済みのそれで。あとは私がさりげなく秘密裏に提出しますので」
「・・・・・」
「おい、さすがの雛華も黙ったよ千麻ちゃん」
暗に離婚の片棒を担がせるような誘いになったことに若干の反省。
まぁ、冗談であったのに私が言うとそれに聞こえなかったらしく、あの雛華さんが苦笑いで不動になった。
と、思いきや・・・。
「うん、見習いたい」
「はっ?」
「何が?」
何故か数回頷いた雛華さんがクスリと笑うと衝撃の一言。
「もう、仲良くて当てられそう」
絶句。
何をどう解釈してそう判断したのか。
唖然として口を開いたまま固まっていれば、そこは私より雛華さんに慣れている彼がくすくすと笑う。
そして持っていた婚姻届を綺麗に元の折り目でたたんでいくと雛華さんのスーツのポケットに静かに忍ばせ、直後にネクタイグイッと掴み引き寄せるとニッと笑い声を響かせた。
「おめでとう雛華。芹ちゃんと幸せになって早く可愛い【いとこ】見せてよね」
グイッと引き寄せ至近距離による色味の違うグリーンアイ。
その両者を横から捉えて無言になる。
この時ばかりは空気のように存在を消して。
「・・・・ありがとう・・茜。・・・・どうしても、俺も芹ちゃんも茜にサインして欲しかったんだ」
「そんなの何十枚でも書いてやる」
「その回数分離婚しろとでも?」
「ははっ、しないだろ?」
「まぁ・・・・茜ちゃんみたく【離婚!】と現実で突きつけられてない?」
苦笑いでちらりとこちらに移った雛華さんの視線にわずかに気まずくなって眉根を寄せると。
彼も追って私に視線走らせどこか意地悪気に微笑み雛華さんに反論する。
「ああ、アレは愛情表現の一環だから。言われてる間は愛されてるんだよ雛華」
なんて勝手な解釈を。
と、思えど。
もうこれ以上は堂々巡りでそれこそ埒が明かないくだらない夫婦漫才。
そう判断してこみ上げた反論をごくりと飲み込んだ。



