しかし、しかしですよ雛華さん。
さすがにちょっと頼む人が違いやしませんか?
仲が良くて信頼おいているのはわかります。
でも何故・・・・彼女の元婚約者である彼にそのサインを求めるんでしょうか?
久しぶりに内心ソワソワした気がする。
婚姻届を手にした彼の後姿をチラチラと確認して落ち着かない。
やはり・・・・傷ついているんだろうか?
初めて本気で愛した彼女が他の人・・・、それも信頼置く雛華さんと結婚してしまう事実に。
角度的に確認できない表情と無言の姿に焦燥感。
堪え切れなくなった指先がピクリと動きわずかに浮上した瞬間。
「心底安心する~。さっさと籍入れちゃってよ、じゃないとウチの奥さん未練タラタラだからさぁ」
そう言って持っていた紙を広げ近くの壁に押し当てサインし始める彼。
『ウチの奥さん』・・・つまり私か?
そう判断が付くと一気に感じる憤りと変な焦り。
そして感じる何とも言えない雛華さんからの眼差し。
違うっ!違いますからっ!!
「っ・・・茜っ!!」
ああ、本来であるならこんな風に重役に手を上げた瞬間に解雇だろう。
だけどもこの期に及んでまだつまらない嫉妬を示す男に怒りの限界。
持っていた鞄で後ろ頭を豪快に横殴りすれば、頭を押さえた彼が勢いよく振り返って挑むような眼差しをぶつけた。
「ねぇ、何度も言うけど俺副社長」
「子供じみた嫉妬である事ない事ホラ話繰り広げていらっしゃったから偽物かと」
「雛華が来るから朝から浮かれてたくせに」
「はい、浮かれてました。いっそ不真面目なあなたなんかより雛華さんが副社長に成り変わればいいってくらいに」
「肯定!?浮気者・・・」
だから、その【ものさし】理解できません。
そして的外れな言葉の数々不愉快です。
腕を組みながら彼の言い分を聞き入れ反論していたけれど、あまりに堂々巡りで一方的解釈の八つ当たりだと判断する。
埒が明かないと深く息を吐くと、その場に置いてきぼりだった雛華さんに視線を移し声をかけた。
「・・・ご婚約おめでとうございます」
「あ、・・ありが・・とう?」
物凄く躊躇いながら、むしろ私に気を使いながら発した言葉に更に落胆。
ああ、真に受けていらっしゃる。
そう気が付いてすぐに誤解だと言葉を返した。



