何てことない朝の通勤時間。
車の後部座席で並んで座ってのいつもの会話。
それでも今日はのっけから不機嫌露わな旦那さま。
まぁ、理由は今まさに向かっている会社にあると言える。
大したことではない。
彼の子供のような我儘に過ぎないのだ。
それでもむしろ今までであるなら逆に楽しみにしていたくせに。
私のせいか?と小さく溜め息をつきつつ心底呆れると、視界に見慣れた建物を捉えて気合を入れなおした。
ゆっくり敷地内に入り込んでいき、ロータリーを回って入口の真ん前につく。
そして先に車を降りると彼側のドアに回ってそれを開いた。
ガチャリと開いたドアからゆっくりとその身を出し、その顔を上げた瞬間にはたいしたものだと尊敬もする。
さっきの子供のような不貞腐れ顔なんて今まで一度もしたことないというようにきりっとし、わずかに口の端を上げた姿。
悠々たる出来る副社長である彼。
そして女子社員達の羨望の眼差しを受けて、私には被害の種を撒き散らし颯爽と歩いて出社するんだ。
はっ、家では甘ったれの眉尻下がりっぱなしなくせに。
そんな悪態をつきながら彼と共に歩きエレベーターに向かう。
慣れた調子でボタンを押し中に乗り込めばきっとその声がかけられる。



