夫婦ですが何か?




一体何が楽しいのだろう。


こんな恋愛感情も抱かないであろう無愛想な秘書を膝に乗せて。


昨夜から一度だって好意的な一面を見せてはいないというのに、何故か私に懲りずに絡んでくるこの旦那という同居人。


いや、旦那だから絡んでくるのか?


そんな疑問の眼差しで無言で見つめ上げていれば、さすがに苦笑いを浮かべた彼が困ったように言葉を弾く。



「千麻ちゃん。なんかもっとこう・・・、今俺の膝に座ってるんだよ?」


「・・・・・重くないですか?」


「いや、軽すぎるくらいだけど。そうじゃなくて・・・」



なんだかはっきりしない物言いに自分でもなんとか思考を巡らせ、そして納得して「ああ」と声を響かせその姿を見上げた。




「やだっ、恥ずかしいよダーリン。あんまり見ないで」


「はい・・・全力の棒読み演技ありがとうございます」


「自分が求めたくせに落胆しないでください」


「もうさ、単刀直入にいうけどさ・・・」


「はい」


「俺とセックスしませんか?」


「・・・・・・」


「可愛い子供作って家族になっちゃいましょうよ」



子作り・・・、可愛い子供?


家族・・・。


一瞬その全てを頭で想像し、あまりに非現実的だと酔いそうになった。


そして頭を抱えると一言。



「無いです」


「ええっ、まさかのNO!?」


「1年で終わる関係に問題の種増やしてどうするんですか?」


「だから、1年で終わらない様に幸せ夫婦の提案してんじゃん!」


「私の幸せはどこに見いだせば?」


「・・・・俺の腕の中?」



そう言ってにっこり微笑み胸の中を示す様に両手を広げた姿をじっと見つめる。


そして溜め息。



「不安しか見えません」


「俺若いけど実力者だよぉ?」


「存じてます。じゃなきゃ見切りつけてます」


「そんな俺に全部委ねて愛してみなよ。追いつかない程愛してあげる」



妖艶。


それが的確なイメージだろうか?


決して朝にそぐわない笑みで口説き文句のようなセリフを私に落とすと、持て余していたらしい指先がそっと私の鎖骨をなぞる。


ああ、こうやって他の女は落とされるのか。


そんな冷静さでそれを受け入れていたけれど、思い出した事実にふと顔を上げた。


視線が絡むと更に笑みを強めた彼がゆっくり顔を近づけ、唇が触れそうになったタイミングで指先を挟みこんだ。



「副社長、お仕事の時間です」



そう告げた時の彼の落胆と言ったら・・・。


心の内で軽く笑ってしまった程。