深く溜め息をついて頭を抱えていれば、他人事のようにくすくすと笑う事の発端である父親。
お前が笑うな。とばかりににらみつければ、何故かにっこりと微笑み返され類似するグリーンアイに見つめられた。
「・・・どうなる事かと思ったけど・・・、結構うまくやってるんだなお前たち」
「ねぇ、今この時にそれ言う神経が理解できない。ナウ夫婦喧嘩中なんだけど?離婚離婚聞き飽きるほど言われてるけど!?」
「そんなの・・・既成事実でも作って逃がすなよ」
「・・・・・・・どうしよう、身内に犯罪者がいる」
「俺だったら逃がさないし・・・、万が一にも逃げたら全力で捕まえて、もう二度と逃げ出さないようにわからせるけど」
「うん・・・、俺母さん似でよかった・・・・」
恐ろしい父の感覚だけはついていけない時がある。
いや、独占欲は理解できる。
それでも相手の気持ちお構いなしに犯罪めいた愛し方もさらりとしてしまえそうな感覚だけは真似できない。
軽く異常だと思える自分のまともな常識に安堵していれば、じっと俺を見つめていた父さんがフッと力なく笑う。
「確かに・・・・優しすぎるところは夕月似だなお前。だから、押しの強い人間には強気を突き通せない」
「・・・・まぁ、そうなの・・かな?」
「現に千麻ちゃんには言い負かされてるだろ?」
「悔しながら・・・」
否めない確認に声を濁らせながら認めると、くすくすと遠慮なく笑う姿にムッとする。
「それでも・・・、俺千麻ちゃんと結婚する前は割と彼女を言いくるめてたりするんだよ?何故か今はできないけど・・・」
「ああ、それはいい傾向じゃないか」
「・・・・どこが?」
「それだけ彼女が突かれても痛くないほどに自分をお前に曝け出してる結果だろう?」
「・・・」
「今更突かれても怯むでもないから彼女はどんどん強気になってお前は今までの感覚でいるから言い負かされる。ある意味この夫婦生活に順応しているのはお前より千麻ちゃんって事だろうな」
凄いやこの人。
さらりと俺がずっと疑問だった事に答えを導き出した。
ぽかんと突きつけられた答えに口を開いて父さんを見つめれば、そんな俺に気が付き苦笑い。
「なんだ・・・、お前そんな事にも気が付いてなかったのか?」
「うん、なんだかどんどん千麻ちゃんに追いやられてる自分に落ち込むだけで、このまま行くと本気で離婚されるな。って焦ってた」
「・・・離婚したくないのか?」
「離婚するつもりなら結婚なんてしない」
「千麻ちゃんを本気で好きって事か?」
「・・・・・・」
「黙るなよ」
思わず閉ざした口。
というより即返できなかった返事。



