「ところで、私が妻の務めを果たしていないと?」
「ん?ああ、そこまだ引っ掛かってた?」
「・・・性格上、仕事に不満持たれると気になって落ちつきません」
言いながらテーブルの現状を眺めて席を立つ、クスクスと笑ってその言葉に反応を見せる彼。
ああ、何やら御機嫌。
そんな事を思いながらコーヒーカップを2つ取り出し、朝挽いたばかりのコーヒーを注ぐ。
ふわり香り立つ香ばしい匂いに満足し、それにシナモンスティックを添えるとテーブルに戻った。
彼は丁度腕時計をその手につけている所で、そのすぐ横にコトリと注いだばかりのコーヒーを置いた。
そしてそれを確認した彼が再びクスリ。
「・・・俺達って下手な夫婦よりお互いの事分かりあってる気がするけどなぁ」
「・・・・何が言いたいのですか?」
「いや、このシナモンとか俺の好み把握してるじゃん?」
「まぁ、長い付き合いですから」
「朝ご飯の加減とかコーヒーだすタイミングとかも完璧で、本当に千麻ちゃんって完璧な奥様」
「先程は不満を感じられましたけど?」
彼のすぐ横に立ったまま持っていたコーヒーを一口含めすぐに飲み込む。
そしてカップを口から離したとほぼ同時にゆっくり伸びてきた手が私の手からそのカップを取り去っていく。
どういう意図か、テーブルにそっと置かれたそれに視線を走らせてから探るようにグリーンアイを見降ろせば、視線が絡んだ瞬間にニッと口の端を上げ悪戯に微笑んだ。
「完璧だよ千麻ちゃん」
「はぁ、ありがとうござーー」
「一般的家事の面ではね」
「はぁ、・・・・」
「でも、ちょっとばかり夫として不満なのよ?」
きっと碌なことを考えていない。
その考えは当たっていた。
私に手首に絡みついていた手が不意に強引に私の体を引き寄せると、思惑だったのか膝の上に乗せる。
予想外にも膝に乗ってしまったその位置から今度は美麗な顔を見上げ、すぐにしてやったりな笑みで見降ろされ眉根を寄せた。
「新婚だもの。少しくらいは甘い時間も完璧に欲しいなぁ。ハニー」
「・・・・明日のコーヒーには砂糖10杯くらい入れといてあげるわダーリン」
「なんか、この【ハニー】【ダーリン】ってちょっと癖になってきたかも。気分上がらない?」
「こんな棒読みで殺意込めててもですか?」
理解不能だと冷めた眼差しで彼を見上げるのに、彼ときたら何やらこの状況が楽しくて仕方ないらしいのだ。



