Side 茜
車を降りた瞬間にパッと光った雷に空を仰いだ。
どれだけ作り出すんだ?っていうほどの降雨量に軽く関心し、鳴り響く雷鳴に眉根を寄せた。
大丈夫かな?
瞬時に思ったのは雷が鳴る度にいつもの余裕薄い彼女の姿。
気丈にふるまってはいたけれど雷が苦手なのは昨日からわかっている。
そう、昨日から・・・。
5年も一緒にいたのに昨日から。
情けない。
この5年雨や雷が鳴らなかったわけじゃない。
もちろんこんな天気の日もあったのだろう。
それでも彼女が勤務中にその冷静な姿を崩すことがなかったから今まで気が付かなかった。
でも私生活を共有している今は違う。
ちょっとした変化にも敏感に気が付く。
彼女は雷が苦手だ。
それも多分・・・暗い部屋とかどこか無防備になる瞬間の。
夜中も鳴り響いていた雷に彼女が眠れていなかったのは気配でわかる。
その姿に手を伸ばしていいのかわからず、彼女の必死の強がりを後押ししたのが昨夜の事。
そしてまた今もこうして雷が鳴り響く暗い夜。
体調も悪く無防備な彼女があの部屋で1人強気でいられるんだろうか?
そんな心配で占められるのに掻き消せない苛立ちも健在で、軽く役立たずの邪魔者扱いされた言葉が頭に浮上すると到着したホテルの入口をくぐっていった。
中に入れば外の天気なんて忘れる穏やかで高級感あるロビー。
入ってすぐにぐるりと視線を走らせると先に俺に気が付いたらしい姿がゆっくりと近づいてきた。
「茜、」
「・・・」
「わかっちゃいるが・・・不機嫌そうだな」
「父さんが夫婦喧嘩の種を撒くだけ撒いて刈り取りもしなかったからねぇ」
「ああ、まだ夫婦喧嘩勃発か?いいじゃないか、偶には苦い時間も必要ーー」
「結婚してから概ね苦い時間で新婚期間過ごしてますけど?」
「・・・・まぁ、性欲わかない言われてたしな」
「それ思い出させないでよ・・・、真面目にへこむ」
忘れたくても忘れられない強烈な彼女の一言に今の今まで苛まれて過ごしていて。
確かにさんざん彼女には突っぱねられていたから薄々は理解していた事実を面と父親を前に宣言されショックがでかい。
同時に今まで持ち得ていた自信の喪失。
あれ?俺今までどうやって女の子に接していたっけ?



