玄関まで来るとまったく変わらない雨脚に笑いたくもなる。
ああ、どうしたものだろうか。
タクシーもこの雨のせいか捕まらず、仕方なく玄関まで降りてみたものの変わらない軽い滝のような雨。
足元に広がるのは水たまりなんて範囲じゃないそれらで、きっと歩いたらぐしゃぐしゃになるだろう。
だけども・・・・歩くしかないのだ。
頼みの綱だった折り畳み傘は・・・・・彼に渡してしまったんだから。
送迎ある彼には不必要かとも思ったけれど、万が一があっても困る。
風邪を引かれても。
だったら・・・ああ、どうせ私は風邪を引いているんだ。
今さら濡れたところで帰るのは自宅。
帰ってすぐに熱いお風呂に入ってしまえばいい。
ぼんやりとした思考でそう結論を出すと降り注ぐ雨の中に身を投じ駆け出した。
ああ、この時点で冷静でない。
熱は嫌い。
まともな思考を奪って自分を馬鹿にする。
そして強気な装備もあっけなく打ち砕かれて無防備な自分を晒してしまうんだ。
着衣水泳。
そんな言葉が浮かんで力の抜けた苦笑い。
そのまま脱力してその場に座り込むと壁に寄りかかった。
まるで川にも飛び込んだ後のように水を滴らせなんとか帰宅した玄関先。
扉が閉まれば雨天のせいもあっていつも以上に暗いその部屋。
そして静かな空間に自分の平常時より荒い呼吸が大きく響く。
気持ち悪い。
濡れた服や髪が肌に張り付いて、体を滑る水滴に鳥肌が立つ。
早く・・・、早く着替えてしまわないと・・・。
ああ、でもお風呂に入るのが先?
ぼんやりとした頭で色々思考してもまとまらない。
それでもこんな玄関で座り込んではいられないと、鉛のように重い体を立ち上げ頭を押さえながら靴を脱いだ。
せめて・・・足元を明るくしないと。
まともな意識でそのスイッチに手を伸ばしパチンと音を響かせれば一瞬で明るくなった空間。
でもそれも一瞬で、直後に爆弾でも落ちたかのような雷鳴が鳴り響きビクリとした瞬間にまた暗くなった。
「・・・・な・・に?」
うっかりまた押してしまっただろうかとパチパチとスイッチを押しなおしても暗いままの部屋。
そうして嫌でも理解せざるを得ない事実。
「て・・い電・・・」
もう泣いていいのか笑っていいのか。
そんな私の口からこぼれたのは乾いた笑い声。



