夫婦になって仕事の面で厄介なことが増える。
仲が良すぎて仕事が手につかないなんて甘い理由だったらまだ脳内お花畑で幸せだったのかもしれない。
だけども私と彼の場合甘い理由が皆無で、さらにそれが理由で衝突絶えないのだ。
そして悲しいかな元の関係から今現在まで四六時中行動共にしている副社長と秘書の立場。
顔を合わせたくないくらいに揉めても一緒の空間に存在する関係だったりする。
それでも不機嫌な彼といるのはこの5年で慣れたといえば慣れてもいる。
だからこそあえてその不機嫌に見ず触れずで目の前の仕事に没頭していたわけだけども・・・。
ああ、別の問題の浮上。
気を抜いてしまえば何度もキーを打ち間違えてしまうほどの集中力の欠如と悪寒。
これは・・・少しまずいかもしれないとその手を止めて目を癒すように目蓋を下す。
「・・・・辛いの?」
不意に雑に投げられた言葉にパッと目蓋を開けて視線を移すと、その言葉を投げた当人はパソコンに視線を向けたまま不機嫌な無表情を私に見せる。
「いえ・・・、目が乾いて、」
「ふぅん・・・」
その一言。
こちらに視線を移すでもなく興味なさそうに返事を返した彼に未練なくパソコンに視線を戻した。
同時に自分の腕時計をちらりと確認し、あと少しで就業時間だと少し安堵し小さく息を吐いた瞬間。
「・・っ・・・」
パッと明るくなった室内と次いで響いた音に瞬時にビクリと反応する。
そして確かめるように彼の後ろの全面を覆うガラスの向こうを見つめれば、天気予報は正確なのだと思い知るような雨天。
あんなに爽やかな晴天はどこに消えたのかと問いたくなるほど。
ああ、必死に仕事に集中しすぎて気が付いていなかった。
そう思い返せば本当にいつもの自分を逸脱していた。
余裕がない。
目の前の事にしか意識が走らない。
そう集中しすぎていていつもの計らいや気配りを忘れていた。
ああ、彼にコーヒーを出すのも忘れていた。
自分の失態に嘆いていればそれを叱咤するように鳴り響く雷鳴に眉根を寄せる。
ああ、お願いだから一時のものであってほしい。
特に今日は余裕がないのに・・・。
そんな淡い願いをかけても叶うはずもなく、どんどん強まる雨脚と雷鳴。
うんざりとした感覚で視線をキーボードに落とせばすかさず入り込む声。



