「しかし・・・、そっかぁ、千麻ちゃん体調悪いのかぁ・・・」
言いながら私の様子を困ったように確認する義父が言葉に含みを持たせてこぼしてくる。
当然拾うべきだと反応を返すと。
「私に何かご用でしょうか?」
「ううん、どっちかといえば用があるのは茜の方かな」
「ん?俺?」
苦笑いの眼差しが彼に向けられ、それに応え視線を移した彼がなんとなくその【用事】を悟ったらしい。
「・・・嫌だ」
「まだ何も言ってないだろ?」
「どうせどっかの会社のお偉いさんとの食事に付き合えっていうんだろ?そのお偉いさんの娘なんかも一緒で、本当の目的は彼女が俺と食事したいってのがモロまるわかりの会食」
「おお、見事寸分違わぬ理解力。ってことで19時からだから」
「ふざけんな。誰が行くかよ・・・だいたい俺にには千麻ちゃんって奥さんがいるのに何で誘ってくるんだよ?馬鹿なのその女」
「ん?ほら、アレだろ。千麻ちゃんって秘書だし、今時古ーい価値観で見下して『きっと私を知れば、』って期待かけてるんじゃない?」
「そんな期待父さんが端から突っぱねてよ」
「茜、上に行けば行くほど嫌なことにも笑顔で対応する義務がある」
「ああ、それは賛同いたします」
「千麻ちゃん!?」
しばらく親子間の会話を耳に黙していたけれど、よくよく聞いていればやはり会社同士の付き合いでもあるのだ。
申し出を無下に蹴れば角が立つ、一度でもその席を設ければ義理は果たせ、嫌なら乗らなければいいだけの話。
つまりは笑って誤魔化し数時間我慢すればいいだけの事。
これも一種の仕事なのだ。
「どうぞお食事なさって来てください」
「ちょっ、何言ってんの?俺行きたくないし」
「副社長、会社同士の付き合いも立派なお仕事の一貫ですよ?」
「わかるけど、そもそも千麻ちゃんはどうするんだよ?具合悪いのに・・・」
「ああ、申し訳ないけれど千麻ちゃんは外してほしいとの先方の要望なんだ」
困ったように微笑み申し訳なさそうにする【社長】に首を縦に振り受け止める。
当然だ、彼目的の会食で妻である秘書なんて邪魔者以外の何者でもないのだ。
すべて理解している。
だけども納得できないのが彼なのだろう。



