「社長、ノック、お願いします。それと何かご用でしょうか?」
「今日はしたよ。いや、何か面白い噂で持ちきりだったから噂のご当人達にその話の信憑性を確認しにね」
クスクスと茶化すように笑いながら近づいてきたのはこの会社の社長であり彼の父親である律さん。
元私の付き添うべき上司で今はこのおかしな婚姻関係上【義父】ということになる。
「茜~、お前もっと女相手に出来る男だと思ってたけど?」
「ご心配いただかなくてもその期待通りに出来る男で過ごしてきてたよ」
「そう?でもその割にお前ここ近年連敗じゃない?溺愛してた婚約者は恋愛初心者の雛華に盗られちゃったし?一応婚姻届けまではサインしてくれた千麻ちゃんも相変わらずみたいだし?」
「・・・・千麻ちゃんとはこれからなんですぅ」
「と、愚息はこんな事を言っておりますが?俺が可愛い孫を抱ける確率は何%位?」
言いながら私をにっこりと微笑む義父に溜め息を吐く。
この人に、いや、この人たちに『セクハラ』云々言ってももう効果はない。
むしろセクハラを挨拶代わりにしているようなものなのだ。
そう自分に言い聞かせ、突っ込みたい気持ちを自ら沈めていくと質問の答えだけを口にした。
「・・・・50%」
「おお、予想外に高確率?!」
「えっ、何?少しはその気になってくれたハニー」
「・・・・・・1年後、私と契約終了後に可愛い後妻の方が産んでくれるのではないかと・・・」
「千麻ちゃん・・・仮にも舅な父さんの前でそういう悲しいこと言っちゃう?」
「まぁ、【仮】ですから。それに社長も事情を呑んでのこの関係だったかと」
淡々と切り替えし、よく似たこの会社の2トップの表情を複雑なものに染め上げた私は凄いだろうか。
私のまったく変わらない意思に彼は溜め息を吐きソファーに倒れこむと顔をタオルで覆い。
腕を組んで少し困ったように微笑んだ義父が彼を見てから私に視線を移した。
「あんまり苛めないでやってよ?」
「日々精神的苦痛を受けてるのは私の方だと思いますが?」
「父親の俺が言うのもなんだけど・・・・、あいつカッコイイよ?」
「【親の欲目】・・・とは確かにいえないほどご子息は見目麗しいかと・・・」
「じゃあ、何が問題?」
「何でしょう?・・・・性格?ダメで迷惑な上司枠からなかなか外せないと言うか・・・・ぶっちゃけ性欲わかないんですよね」
「・・・・・」
「・・・・・ぶっちゃけすぎだぜハニー」
度重なるセクハラに、黙らせるには上回るセクハラが一番かと偽りなき事実を断言すれば、微妙な表情で固まる義父と泣きそうな笑みで私を見つめる彼。



