「そもそも・・・何でそんなにこの結婚に夫婦らしさを?」
「だって、少しでも愛を深めたいじゃない。あっ、卵焼き美味しい」
「深める必要が?ありがとうございます」
「そりゃあ、結婚したんだもん。それなりに夫婦の醍醐味?味わいたいじゃない。このお浸し何かかってる?」
「どうせ1年で切れる契約に無駄に感情を挟むんですか?あごダシの液を少し」
「仲良くなれば切る必要もないでしょ?コレ俺の好物リスト入れておいて」
「申し訳ないですが、もう5年もお傍にいて一度も恋愛感情動いた事ない男性に今更愛が芽生えるとは思えないんですが。味噌汁は薄味、お浸しはあごダシですね」
「・・・ふふっ、」
「なんですか?」
「いや、何だかんだ言ってちゃんと夫婦ごっこに乗ってくれてるなぁ。って」
食事をしながら何となくこの夫婦論を繰り広げていれば、ちょいちょい挟む食事への感想のせいで確かに一般的家庭な夫婦の雰囲気は出ていたと自認する。
まぁ、だからと言って夫婦ごっこをしていたつもりはないのだけど。
「・・・・まぁ、契約の間はそれなりに妻の務めは果たしますけど」
「え~、どうかなぁ?」
なんだその疑うような反応は。
仕事ですから。とばかりに言葉を弾けば、苦笑いで私の作った味噌汁を飲みながら言葉を向けた姿に、
その味噌汁は私が作ったのだと冷めた眼差しで見つめてしまう。
当然色味ばかりは綺麗な緑が私と絡んで小さく噴き出した。
「不満そう~」
「いや、疑いながら食しているそれらは私が勤めを為して出来あがったものだと・・・」
「あはは、うん、千麻ちゃんいい奥さん~。俺和食大好き~、お酒は日本酒が好き~」
「あ、同感です。日本酒好きです」
「うっそ、もう似てきた?夫婦だし?」
「・・・・・・日本酒はもう8年前からは好きでしたけど?」
事あるごとに夫婦を強調してくる彼に若干・・・いや、昨日の夜からかなり呆れて溜息も出ない。
そもそも少し会話がずれていると気が付き日本酒の下りは無視して話の軌道修正を心みる。