ここに限らず喫茶店やカフェではだいたいは持参した本を読んでいる。それ以外はゼミの課題や、大学院の準備にあたる短い論文の構想を練る。

 今日はこの間のプログラミング基礎のプリントを持って来た。授業中に配られるプリントの最後に実践のやり方が書いてあるから、それを試そうと思って。

「ユリちゃん、何やら難しいことしてるね」

 後ろの食器棚にお皿を戻しにいったマスターが、私のラップトップの画面を見て言った。

「いつも分厚い本を読んでいるけど、今度はパソコンかい?」

「うん、人生初のプログラミングに挑戦中」

 水樹先生の授業は初回以降もたのしい。ただ授業は体系的な知識としての講義だから、できれば実践に落とし込みたい。
 
 だからこうしてパソコンと向き合っているんだけど、これがまた結構難しい。説明はわかりやすいものの、もともとPC関係が得意分野じゃないからキーがどこにあるのかわかんなくなっちゃう。

 そうこう戦っているうちに、カウンターにわたしの甘味が現れた。

「おいしい」

 冷蔵庫にいらっしゃったであろうガラスの器に、ぷるぷるのコーヒーゼリーとバニラアイスが乗っていて。幸せ。